東海道新時代を担う、新たな都市構想

富士山の世界文化遺産登録を機に、国内外で存在感を高める静岡県。南海トラフ沖地震のリスクに対しては、防災・減災と経済成長を両立する「内陸のフロンティア」構想を掲げる。川勝平太知事のもと、静岡県は新しい日本の中心を目指す。

─静岡県は総合計画として「富国有徳の理想郷"ふじのくに"づくり」を掲げています。どのような理想像を描いているのでしょうか。

静岡県は首都圏と関西圏のちょうど中間にあります。また、富士山の位置は日本列島の中央です。富士山を軸に静岡県の「中心性」が立ち現れ始めました。

歴史的に日本は、東洋文明は京都で受容し、西洋文明は東京で受容してきました。東洋文明を受容する時代が遠い昔に終わりましたが、西洋文明を受容する東京中心の時代も今や終わりつつあり、現在の日本は「ポスト東京時代」に入りました。

ポスト東京時代をリードする好位置に静岡県はあり、東西から富士を目指して登ってくる東海道新時代を始めます。それを"ふじのくに"づくりと命名しています。それを実現する総合計画は2010年度から10年間が期間です。

最初の4年間の実績は「マニフェスト大賞グランプリ」に輝きました。残り6年間の計画を4年で完遂します。今年中に基本計画を策定し、道筋を明確にします。最重点施策は内陸のフロンティアを拓くプロジェクトです。

防災・減災を成長のエンジンに

─最重点施策に掲げる"内陸のフロンティア"構想とはどのような構想ですか。

有事には防災・減災に役立ち、平時には経済成長を促進するもので、防災・減災と経済成長の両立を目指すプロジェクトです。

最優先課題は防災・減災力の向上です。東日本大震災の復興では津波に襲われないように市街地の内陸・高台への移転が望まれていますが、実現できていません。静岡県ではすでに内陸高台部に新東名高速道路の一年以上の前倒し開通を実現しました。このインフラを生かし、内陸・高台部に物流・産業の集積と住居の移動を進めています。

緑と水が豊かな中山間地なので、環境と調和した都市をつくります。東日本大震災の復興モデルを先取りするもので、専門用語では「事前復興」といいます。

静岡県は太平洋工業ベルトの一郭を形成しています。これまで海外から原料を輸入し、臨海部で加工して輸出してきましたが、今では、原料より製品の輸入が多く、沿岸部の優位性は低下しています。新東名が開通するや、沿岸部から内陸部へ移転する企業が増えており、それを政策的に後押しています。

内陸部に産業が集積してくると、人口が増えて病院や学校なども必要になり、都市づくりが始まります。景観に配慮し、ビル・工場の高さや緑地比率に規制を設けます。その都市像を「ガーデンシティ(農芸都市)」と名付けています。

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