「食心理学」マーケティングの活用

食マーケティングの第一人者であるブライアン・ワンシンク氏が7月に来日。肥満の子どもが日本の10倍いる米国で、消費者心理を分析したユニークなマーケティング手法を用いて、新たな食市場を開拓する。日本の食品産業に必要な「食心理学」とは何か。

米国肥満児の意識を変える

米国の子どもの肥満率は日本の約10倍。米国では肥満防止・対策のために年間約1500億ドル(15兆円)の費用支出を続けている。政府は「Healthy, Hunger-Free Kids Act(健康で飢えることのない子どもたち法)」法案を成立し、オバマ大統領夫人ミッシェル氏が始めた「子供の肥満撲滅運動」などの社会的背景もあり、米国では健康食材への関心が一層高まっている。大豆や黒酢など日本特有な健康食材、品質の高い健康食品は米国で市場開拓のチャンスが到来している。

米国農務省とともに学校給食改善プロジェクトに参画し、ユニークな手法で成果を上げたコーネル大学のブライアン・ワンシンク博士は食心理学の視点から食マーケティングを提唱している。

ワンシンク氏は「広告やパッケージも食生活に及ぼす影響は大きい」という。

ワンシンク氏はコーネル大学フード&ブランディング研究室を設立。自ら食生活改善の調査研究を行う

1つの学校において50ドル以下の費用で子どもたちの給食環境を改善し、肥満防止に挑むというプロジェクトにワンシンク氏は取り組んだ。ビュッフェ形式の給食でメニューはこれまでと全く変えない。変えたのは並べる順番と、メニューのネーミングだ。脂質や砂糖の多いピザやチップス、甘い飲み物を取りにくい場所に置き、ヘルシーなサラダやチキンには子どもが興味を持つ名前を付けて手前に置く。それだけで子どもたちが選ぶ料理は変わり、1日平均一人当たりの給食カロリーを18%減らすことができた。いつもと同じフルーツも容器をきれいなボウルに入れると「いつもよりおいしそうだったから」と女の子は嬉しそうに選んだ。

「食マーケティングで重要なことは、消費者の心に響くブランド化です。健康的な食品を"健康に良い"と伝えるだけはなく、心理的に食べたいと思わせる施策が必要です。子どもたちに無理やりヘルシーフードを食べさせようとしても逆に抵抗されて良い効果は生まれません。ヘルシーな食生活を定着させるためには、健康的な食品を選択させる環境整備が大切です」

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