2013年9月号

地域未来構想 大阪府

100年企業のブレない経営

宮崎仁之(牛乳石鹸共進社 代表取締役社長)

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ロングセラー「赤箱」をはじめとした商品で国内トップシェアを誇る牛乳石鹸。釜炊き製法をベースとした伝統の技術力でマーケットを開拓し続け、海外展開や異業種とのコラボレーションなど、新たな展開にも力を注いでいる。

中小の製造業が集積する大阪は、古くから日本産業の担い手として経済の成長を支えてきた。関西国際、伊丹の2つの空港と阪神港を抱えて、陸・海・空のルートが結節し、生産地、消費地として発展。江戸期や明治期に発祥し、当時の技術をベースに成長した老舗も多い。

曇らないスポーツ用ゴーグルで知られる山本光学や、絶対に緩まないナットで世界を席巻するハードロック工業、日本唯一のアトマイズアルミ粉専業メーカーであるミナルコなどは、オンリーワン、ナンバーワン企業の代表格。吸水性の良い後晒し製法でつくる泉州タオルのように、地域集中性の強い産業は63業種にのぼる。

やさしい肌触りをひたすら追求

石鹸製造もその一つである。日本で石鹸の生産がはじまったのは明治初期。

当初から大阪は石鹸生産の中心地であり、貨物輸送の水運が発達した寝屋川沿いに製造工場が点在していた。

「牛乳石鹸、よい石鹸」のCMで知られる牛乳石鹸共進社は1909年に創業。

ロングセラーの固形石鹸「カウブランド赤箱」の生産は28年に始まり、中国などの海外市場でも売り上げを伸ばしてきた。現在は化粧石鹸やボディソープ、入浴剤などをメインに、関連会社を合わせて約300のアイテムがそろう。

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ロングセラーの固形石鹸「カウブランド赤箱」の生産は28年に始まった。

石鹸の生産は、ほぼ安田工場(大阪市)で行い、その生産能力は1日約50万個、年間約1億4000万個。ここ数年は、固形石鹸の国内シェアトップに君臨している。同社の宮崎仁之社長は、こう語る。

「毎日使うものですから、肌にやさしいものでなくてはいけません。戦時中さえも貫いてきた品質へのこだわりを再認識しようと、100周年の2009年に基本理念を『ずっと変わらぬやさしさを。』に定めました」

昔ながらの釜炊き製法が特徴。五感に頼り、手作業を大事にした製法で、高い品質を保っている

昔ながらの釜炊き製法(けん化塩析法)が同社の特徴である。天然の牛脂とヤシ油を原料に加熱攪拌させ、塩析を経て石鹸素地と石鹸甘水に分離する製法で、反応の進み具合は見た目や粘度の量で判断。五感に頼りながらの作業に1週間を要する。保湿成分がほどよく残る、しっとりした肌触りの石鹸が生まれるのは、こうした手作業を大事にしているからだ。

「フィリピン産のヤシ油を輸入しているのですが、ヤシを割って油を取り出す現地の作業は大変なものです。毎年社員を見学に派遣し、材料の大切さを学んでもらっています」

「選択と集中」が成功のカギ

ボディソープの登場により、固形石鹸は80年代をピークに生産が縮小し、減少の一途をたどっていた。大手メーカーさえも撤退する中で同社が生き残った要因は、自社の強みを見極めて製品専門化を図る「選択と集中」にある。

ヘアケア市場などが拡大していた70年代後半から80年代にかけては多角的な商品展開を進めていたが、一品ごとの売上管理が追いつかず、売れば売るほど赤字に。そこで利益効率のよい石鹸とボディソープに経営資源を集中。300品目あったアイテムを170に絞り込んだ。これが功を奏して業績も回復。近年は洗顔石鹸の良さが見直されていることもあり、新たな石鹸ブーム到来に向けた商品開発を進めている。

「選択と集中」はもう一つの側面を持つ。カテゴリーの中でニーズを細分化し、コア技術に徹しながら小さな市場でもトップを目指すニッチ戦略である。情報があふれ、ニーズも多様化する時代に消費者が求めるのは、マイソープだ。コラーゲン配合のゼリー状洗顔ソープや、ホイップクリームのような泡で保湿効果の高いボディソープなど、高付加価値の商品が好評だ。500円から1000円程度の中価格帯が伸びているという。

宮崎仁之 牛乳石鹸共進社 代表取締役社長

いずれの商品も根底にあるのは、肌へのやさしさだ。着色料や香料、品質安定剤などを使わない「無添加シリーズ」は、従来品の欠点だった泡立ちの悪さをなくし、満足感を追求した商品。

使用感を良くするため、赤箱に使用している石鹸素地の配合を見直し、品質を安定させた。原料から独自の石鹸素地をつくっているため、配合を変えることも可能なのである。この高い技術力を駆使して多彩な商品を企画し、泡がくずれにくく保湿効果の高い入浴剤「贅沢泡とろシリーズ」や、美容液生まれの泡ハンドウオッシュ「ウルルア」などが誕生している。

「情報化の時代ですから、いいものは口コミを通じて広まります。時代のニーズを的確に捉えた商品を開発すると同時に、ずっと変わらない商品に対する思いをお届けしたい」

国内・海外の両輪で成長へ

今年4月からはインドネシア市場に参入。ライフスタイル・インターナショナル社と代理店契約を結び、「カウブランド」など6シリーズの販売を開始した。インドネシアではトイレタリー・化粧品の需用が高まっており、市場としてのポテンシャルが大きい。

ただ、海外では各国の水質によって石鹸の泡立ちは変わるため、しっかりマーケティングを行い、牛乳石鹸ブランドを定着させることを目指している。

一方、国内では地道な取組みで牛乳石鹸のファンづくりを推進。固形石鹸の型抜きを体験する子ども向けイベントを百貨店や区民まつりなどで実施し、好評を得ている。また、CMを通したマス広告に代わり、異業種コラボ商品でユニークな宣伝活動を展開。牛マークをデザインしたTシャツ(販売元ユニクロ)や、スマートフォン専用ケース(販売元StrapyaNext)など、知名度を生かした新たな魅力をつくり出している。

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Tシャツや、スマートフォン専用ケースなど、他社とのコラボ製品の開発も進む

さらにハード面では、製造過程で出る廃液を再利用しメタンガスをつくる「甘水エコロジープラント」を安田工場に設置。大阪ガスとの共同研究によるもので、今年4月から稼動している。

石鹸製造の加熱などにメタンガスを利用することで、工場で利用するエネルギーの約10%を削減できるという。

「技術は発達し、年々進化していきますが、変えてはいけない部分もあります。誰しも子どもの頃は親子でお風呂に入り、石鹸を泡立てて遊んだ経験があるはず。石鹸製造販売によって、日本の伝統文化の継承にも寄与していきたい」

ぶれない軸で既存商品に新たな価値づけをし、100年先、200年先も続く企業を目指し続ける。

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