「経営理念」の全体像を展望する

平素何気なく使っている経営用語の中で、いざ「その真意は?」と自問してみても、スラスラとは回答が出てこない用語の1つに「経営理念」がある。

この連載では、経営理念・長期ビジョン構築の領域で、計20数社に対する筆者の豊富なコンサルテ―ション体験を踏まえ、読者各位の具体的なニ―ズにピッタリと適合する形で、その全体像と部分像を解き明かす。

いまなぜ「経営理念」なのか?

自社の経営を預かっているのは、トップを初めとする1人ひとりの社員(=全社員)です。 読者のご経験からもお分かりのように、その自社の実力は、次の2つの条件が完熟した時に最高度に発揮されます。

(1)自社を取り巻く環境変化がどんなに熾烈であっても、自社が将来に向けて邁進する適切な方向軸が明確に設定されており、しかもそれが1人ひとりの社員から納得づくで共有されていること。

(2)自らの課題ごとの具体的な目標に向う全力投球姿勢が、1人ひとりの社員から納得づくで共有されており、しかもその姿勢が全社員のエネルギ―となって1つ に結集されていること。

専門用語で整理すれば、(1)は「全社最適像の構築・実現に向けたトップ主導型」アプロ―チです。(2)は「現場全員主役型」アプロ―チです。

ところが、現実の企業(=自社)で、この2つの条件と1人ひとりの社員の価値観とを結びつけることは、決して容易ではありません。

というのは、各自の価値観は先天的に多種多様です。その上に、各自の所属部門・職位が異なるので、その価値観は文字通り千差万別になるからです。

「経営理念」の定義と自社への導入

上段の「自社の2つの条件」と「各自の千差万別の価値観」とを結びつける連結ピン(linkage pin)の役割を果たしてくれるのが「経営理念」なのです。

一言で言えば、「経営理念」とは「自社の経営の志」です。

規模の大小に関係なく、自社を代表しているのはトップですから、「自社の経営の志」は、その「トップの経営の志、その志の背後にある心、トップの経営観・世界観・経営哲学」に由来します。ちなみに、「経営理念」の一般的な英語表現"corporate philosophy"を直訳すると「経営哲学」になります。

このように、「一言の定義」は極めて簡潔ですが、それを自社に導入しようとする際には、まずトップ自らの世界観の自問自答から開始する必要があります。

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