地の利と地域資源を活かし、事業拡大

三重県で再起業して業績が50倍に伸びた製薬会社。三重県の特産物を使った加工品を次々に開発し全国ヒットを飛ばす農家―。その成功の背景には、三重県のポテンシャルを生かした巧みな企業誘致展開や、埋もれた観光資源の地道な発掘作業があった。

三重県多気郡多気町。周囲を山や田んぼに囲まれたのどかな場所に、万協製薬がある。大手製薬会社の0EM専門メーカーとして現在、約70社200品目、年間約1500万個を製造。1996年に三重県に拠点を移して以来、設備導入や工場増築を続けるなど業界で目覚ましい躍進を遂げている。

移転を決めた理由は立地と行政の支援

万協製薬の工場内。OEM専門メーカーとして現在、約70社200品目、年間約1500万個を製造している(写真提供:万協製薬)

もともと同社は、外用薬専門の製造工場として神戸市長田区に60年に設立された。しかし、95年の阪神大震災で工場が全壊、事業の再開場所を模索することになった。

「近畿2府4県の中で、土地代が安価で交通インフラが整備されている場所に絞って検討したところ、三重県に該当する物件が見つかりました。さらに行政が薬事産業を歓迎するムードだったことも三重県で起業する大きな決め手となりました」と振り返るのは同社の松浦信男代表取締役社長。特に、起業の際、行政の理解やサポートが得られることは、金銭に代えられない大きな魅力のひとつである。というのも、一般的に医薬品製造業は、許認可業であるがゆえ、行政から厳しく指導されたりコントロールされたりする部分が少なくないからだ。

一方の三重県では、次代を担う医療・健康・福祉産業の創出と集積を目指すメディカルバレー構想を打ち出していた。薬事産業や健康食品産業などのクラスターを形成するために、積極的に企業誘致戦略を推進。具体的には、立地促進補助金創設の他、関連産業における産学官民関係者のネットワークづくり、人材育成に向けた研修会の開催、産学官共同研究支援、許認可サポート体制の強化など様々な環境整備を進めた。加えて、あらゆる広報媒体を活用した県内外への情報発信にも取り組んだ結果、三重県の薬事産業は118社、230施設に増加、バイオベンチャー企業は6年間で19社誕生、新たな立地や創業による医薬品出荷額は1341億円(07年)に上るなど、大きな成果を生んでいる。

松浦氏は、こうした集積効果をお祭りの夜店になぞらえて「夜店効果」と呼んでいる。

「たとえばお祭りの時、1店舗だけ出店しても流行りませんが、たくさんの夜店が出店することで流れが生まれ、活気づき商品が売れる。三重県のメディカルバレープロジェクトがまさにそうだと思います。行政が先導することで引力のようなものが生まれ、県内への企業進出が活発化し、ポテンシャルが高まるのです」と松浦氏は説明する。

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