経営戦略の手法で観光と新産業を構築

三重県が、おおむね10年先を見据えた長期的な戦略計画をまとめた「みえ県民力ビジョン」。同ビジョンの中で、産業構造を新たに構築するための中長期的なアクションプログラムとして策定されたのが、「みえ産業振興戦略」だ。

県では「みえ県民力ビジョン」を踏まえて、個別分野において「みえ産業振興戦略」「みえフードイノベーション」など、さまざまな中長期戦略を打ち出している。ビジョンに基づいて毎年策定する県の経営方針は、県内外から招聘した10名の委員がアドバイザーとなる経営戦略会議が関わった。メンバーは構想日本代表の加藤秀樹氏や東芝会長の西田厚聰氏などの識者で、世界や日本の動きを視野に入れた戦略立案を提言している。

1052社を直接訪問政策に活かした現場の声

昨年11月に行われた三重県観光キャンペーンのキックオフイベントでは、鈴木知事とタレントの萩本欽一が登場し、会場を盛り上げた

「みえ産業振興戦略」の戦略の策定にあたっては日本総合研究所の寺島実郎氏をはじめ県内外の識者16名が委員として参加した。

産業振興戦略会議は11年11月から12年5月まで3回行われ、会議終了と同時に官民によるプロジェクトがいくつもスタートした。一般に、自治体の中長期計画は庁内会議などを経て職員の手でつくられることが多いが、企業の声など現場の声が反映されていないので内容に実効性が欠け、たいていは絵に描いたもちで終る。しかし三重県は県内企業の声をより多く取り込んでいる。雇用経済部雇用経済総務課は「事前準備で県内企業1 0 5 2 社を直接訪問し、5000社からアンケートを取るなど、企業の"肌感覚〟を産業振興戦略会議に反映することに力を注ぎました」と強調する。

また実効性を持たせるため産業振興戦略会議の分野ごとに6つの分科会を設置し、具体化するためのプロジェクトの準備を並行してすぐに始めた。これは県と関連企業を連携させるために担当職員が調整役となるもので、対象企業の洗い出しから企業を訪問しての趣旨説明、実行計画までを行う。いわばプロジェクトの実質的な黒子役となった。またプロジェクトが計画どおり進むように戦略策定後も大半の委員をアドバイザリーボードとして残し、戦略やプロジェクト全体に提言できるようにしたのも特徴と言える。

県の産業構造はこれまで自動車関連産業と電気電子関連産業を中心とした輸出型産業で牽引していたことから下請け企業が多く、製品出荷額が全国トップレベルであるにもかかわらず、付加価値率が低い。これは企業へのヒアリングからも製品の付加価値化や海外展開の遅れ、人材育成などを求める声となって表れた。

そこで県は6つの戦略を立案し対策を講じた。成長産業の育成、企業誘致、サービス産業の振興、ものづくりの維持と強化、県内企業の海外展開、振興戦略のプラットホームづくりである。このうち成長産業の育成と企業誘致は、環境・エネルギーと医療・健康産業への進出。またサービス戦略は観光関連産業の振興、ものづくり戦略はものづくり中小企業の強化、高度部材などへの取り組みを重視した。海外展開は海外見本市などへの出展を戦略とし、振興戦略プラットホームは国内外から知識を呼び込むためのネットワークづくりなどをめざしている。

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