客が米を炊く、人気の料理店 「暮らし」を問うローカルビジネス

何もなかった土地に、自分の手で1000本ものブルーベリーの木を植樹し、新しいレストランをオープン。そこには手づくりの「かまど」が置かれ、来店者は自分でご飯を炊くことができる。その体験は、人の暮らしのあり方を問い直す。

滋賀県高島市の安曇川町泰山寺地域にある「ソラノネ食堂」。屋内外に、落ち着いた空間が広がる

遥か下方に琵琶湖を見渡す大津市の山中、鳥がさえずり木々や草花が風にそよぎ、自然の豊かさを体いっぱいに感じられる環境に『ブルーベリーフィールズ紀伊國屋』はある。無農薬、無化学肥料栽培のブルーベリー畑に、そのブルーベリーなどを使ったオリジナル料理を楽しめるフレンチレストラン&カフェ。夏には大粒のブルーベリーがたわわに実る。

身一つでこの地を開拓し、未経験の農業を営んできたのが岩田康子氏。2人の子を抱えた康子氏は、1983年に初めて同地を訪問。美しい景色に目を奪われ、ここで生きていこうと決意した。農業の素人ながら1本ずつ600本のブルーベリーを手で植え、苦労を重ねて農園を広げ、レストランなどの設備を充実させてきたのである。

土地と出会い、Uターンを決意

現在は、長男の松山剛士氏も『ブルーベリーフィールズ紀伊國屋』を切り盛りする。

それに加えて松山氏は、成安造形大学内のカフェテリア『結(ゆい)』や、自然に囲まれたレストラン『ソラノネ食堂』を滋賀の湖西地方に相次いでオープンさせてきた。

大学卒業後、東京で働こうと思っていた松山氏がUターンを決めたのは、たまたま滋賀県高島市安曇川町のとある山上の土地に出会ったからだ。そこは、わずか13軒40人ほどの集落だった。しかし、豊かな自然環境があるからこその事業展開があり得る、その可能性に魅せられたのである。

母の勧めやアドバイスもあり、松山氏は「多くの人に、雄大なこの自然に身を置いてほしい」という思いで自分の店づくりに動き始めた。

2000年、松山氏は約1000本ものブルーベリーを自分で植栽することを決意。奇しくも母と同じ道をたどったのである。そして8年後、『ソラノネ食堂』はオープンした。

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