出でよユニコーン!海外VCが日本市場に寄せる期待、そのまなざしとは──
(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年3月5日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
革新的なイノベーションにより、一気に市場を席巻する。そんな経済ダイナミズムを体現しているのが、設立10年以内の未上場企業でありながら時価総額10億ドルを超える「ユニコーン」と呼ばれるメガスタートアップ企業群の存在だ。
日本ではさまざまなスタートアップが誕生しているものの、海外に比べてユニコーンと言える企業は少なく、経済のブースター役になるまでには至っていない。
ユニコーンを目指すには、早くからグローバルに資金を調達し、連携先を開拓しながら、世界の中で勝負していくことが求められる。日本発のユニコーンが次々と育っていくためには何が必要なのか。そして、海外を含め投資家が日本市場に寄せる期待、そのまなざしとは──。
課題はレイター期の資金調達
日本のスタートアップ数は2025年現在、約2万5000社にのぼり、2021年比で1.5倍に増えた。一方でユニコーン企業は8社にとどまっており、2021年比で2社増えたにすぎない。
研究開発のシーズ(種)は多いと言われるなか、事業拡大期にいかにして十分な資金を調達し、海外を含め市場を開拓できるかが、ユニコーンに成長していけるかどうかのカギとなる。政府も「スケールアップ」を重点ポイントに挙げ、スタートアップが生まれ、ユニコーンへと育っていく環境の整備に力を注いでいる。
課題の一つは資金供給環境だ。
第1回日本成長戦略会議スタートアップ政策推進分科会(2026年2月4日)の経済産業省提出資料によると、2024年、日本の国内総生産(GDP)に占めるスタートアップの資金調達額の割合は0.14%。これは、米国0.62%、シンガポール0.52%、英国0.50%の3分の1にも及ばず、フランス(0.23%)や隣国の韓国(0.22%)の後塵も拝している。特に、さらなる事業規模の拡大や製品量産体制の構築、IPOやM&Aに向けたガバナンス整備などが求められる「レイター期」においては、大型資金供給の不足が目立っており、「アーリー」「ミドル」「レイター」の各期のうち、米国ではレイター期での投資額が件数で35%、額にして68%を占めているのに対し、日本では件数は9%、額も17%にとどまっている。
このため、日本のスタートアップはレイター期の大型投資を前提としない資本政策・事業戦略をとっている。さらにシナジー目的の投資などによる株価の過大評価が、投資家にとってレイター期の参入障壁になっている可能性も指摘されている。

主要な欧米VCの進出相次ぐ
ただ、こうしたスタートアップを巡る日本の状況に変化が訪れている。海外の有力ベンチャーキャピタル(VC)の日本進出が相次いでいるのだ。
2025年9月、大阪・関西万博会場で開催された「Global Startup EXPO 2025」には、海外の有力VCの経営トップらが参加し、日本での投資拡大の方針を表明するなど、今後の日本市場への期待感を示した。
同イベントの場では、世界最大級のVC「New Enterprise Associates(NEA)」が日系スタートアップに4件目の投資を実施したことを表明したほか、ディープテック投資を専門とするフランスの「Jolt Capital」や米国トップ20のVC「Alumni Ventures」が東京にオフィスを開設することを表明している。
また、米国のVC「Andreessen Horowitz(a16z)」も近く東京に拠点を開設する方針を示しており、2026年2月には都内で起業家、投資関係者を対象としたカンファレンスを開催。日本人起業家が米国で設立したShizuku AIへの出資を発表するなど、日本市場への関与を一段と強めている。
では、こうした海外VCから日本のスタートアップが投資を受けるには、何が求められるのか。一説によれば、投資対象とみなされるためには、年間経常利益が安定して拡大し続けていること、そして高い成長率を持続できていることが重要な判断基準になるという。
カギを握るアクセラレーターの存在
こうした要件を満たす有望なスタートアップを育成するうえで、注目されるのが「アクセラレーター※」と呼ばれる存在だ。
ジェトロ(日本貿易振興機構)は、経済産業省などと協力し、成長前段階にあるスタートアップへの投資で世界最大級の米「Techstars」を誘致し、スタートアップ・アクセラレーションプログラム「Techstars Tokyo」を開催している。
日本の起業家がグローバルな視点で考え、行動できるよう支援するとともに、海外企業が国内の企業や投資家、優秀な人材とつながることが出来るようサポートしている。プログラムを通じて、海外メンターや企業、投資家との接点が生まれている。
直近では、カリフォルニア大学バークレー校のアクセラレーターであるBerkeley SkyDeckは「Global Startup EXPO 2025」で、経済産業省、ジェトロとディープテック領域における大学などの研究や次世代技術の社会実装の加速、スタートアップの成長促進のための協力深化を目的とする共同声明に署名を行っている。
また、経済産業省が米シリコンバレーに設立したスタートアップ支援拠点「Japan Innovation Campus」は、日本と米国や海外のスタートアップ・エコシステム※とをつなぐ結節点として現地のエコシステムに浸透し、現地のVCやアクセラレーター、大学関係者との交流の場を提供している。
※アクセラレーター…英語で「加速させるもの」を意味する。スタートアップや起業家をサポートし、事業成長を促進する人材・団体・プログラムを指す。
※エコシステム…生物が互いに依存し合いながら共存する「生態系」を指す言葉。スタートアップの分野では、起業家を中心に、資金・人材・技術・市場が循環して、イノベーションを生み続ける仕組みを指す。
海外展開に新たな潮流
一方で、スタートアップ側のグローバル戦略も多様化している。「レイター期のスタートアップは、日本市場でPMF※を達成している分、その成功モデルが国内に最適化されており、海外展開は簡単ではありません。一方で最近は、レイター期であっても創業者自らが強くコミットし、ビジネスモデルなどを変革し世界展開に挑む事例も出てきています」(ジェトロ関係者)というのだ。
代表的な例が、東京大学大学院発のスタートアップ「Ubie」だ。UbieはAIを活用した医療プラットフォームを開発し、何らかの症状が出た時、シンプルかつ効率的に医療機関にアクセスできるサービスを提供している。
米国のトップ医療機関である「Mayo Clinic」と提携することで、日本発の体制を維持しながら、米国での連携・事業展開を強化している。Ubieの成功は、「『有望なスタートアップが世界に流出してしまうのでは』という懸念に対して、日本市場で継続的に成長しながら、海外市場を取り込む成長モデルとして有望視される」(同上)という。
※PMF…「Product Market Fit」の頭文字を取ったもの。製品やサービスが特定の市場に適合している状態のこと。
今秋、大阪で「Global Startup EXPO」を開催
日本のスタートアップのグローバル展開を更に後押しするため、経済産業省は2026年秋「Global Startup EXPO 2026」を大阪で開催する。大阪・関西万博で開催されたイベントの第2弾で、国内外のトップ起業家、投資家、研究者など、それぞれの分野で世界トップクラスのエコシステム関係者が一堂に会するという。
経済産業省としては、国内外のディープテック・スタートアップが有する優れた技術やサービスを世界に発信することで、国内外からの資金呼び込みや人材育成の強化を図り、スタートアップ・エコシステムの更なるグローバル化を図りたい考えだ。
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