家電の省エネ基準は消費者に数十億ドルの節約をもたらし、汚染を減らし、気候変動と闘う
※本記事は『THE CONVERSATION』に2025年4月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています。

ドナルド・トランプ前大統領は、アメリカの家庭用電化製品に関してこれまで数十年間続けられてきたエネルギー効率に関する規制を撤廃したいと表明しました。彼はその理由として、規制を緩和することで、アメリカ国民が自分たちのニーズに合った製品を「自由に選べる」ようになるからだと述べています。
2025年4月9日の声明において、トランプ氏は、政府の規制を変更するにあたって、本来法的に義務づけられているパブリックコメント(国民からの意見募集)などの手続きを経ることなく、自身の権限で変更できると主張しました。
しかし、環境規制を専門とする研究者として私は、これらの規制がもともとエネルギーの節約と消費者の光熱費削減を目的として設けられたものであることをよく理解しています。また、数多くの企業や消費者が、エネルギー効率基準を強化するための連邦規制を一貫して支持しており、それを弱体化させる動きには基本的に反対してきたことも知っています。
最初に政府が定めた家電製品向けのエネルギー効率基準は、1974年にカリフォルニア州によって導入されました。当初の対象は冷蔵庫で、当時の家庭用電化製品の中で最も電力を消費する機器でした。その後、他の家電製品も規制対象に加えられていきます。次の10年の間に、さらなる州が独自に基準を設けるようになりました。というのも、エネルギーの節約は、新しい発電所の建設にかかるコストを回避する手段として注目されていたからです。
州ごとに異なる基準が乱立したことを受けて、連邦政府は一旦自らが基準を制定した製品については州が個別に基準を定めることを禁止しました。1987年に導入された初の連邦レベルの効率基準は、冷蔵庫を含む13種類の家庭用製品が対象となりました。
それ以降、連邦政府はさらなる製品に対する基準を設けるとともに、既存の基準も段階的に厳格化してきました。こうした変化によって、家庭用機器だけでなく、業務用・産業用の設備もより高効率となり、消費者には数千億ドル規模の節約をもたらしました。また、発電所からの大気汚染の削減や、気候変動の主因である二酸化炭素の排出削減にも貢献しています。

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