ドローン配送事業は地域経済を救うのか 豪州の先行導入地域に行って分かったこと
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年6月27日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
ドローン配送会社Wing社の最高経営責任者(CEO)は、2024年を「ドローン配送の年」と宣言している。同社は2014年にGoogleの「ムーンショット」プロジェクトとして初めて公表され、現在ではオーストラリア、アメリカ、フィンランドのいくつかの都市で運営されており、さらに拡大を計画している。
Wingは、ボタンひとつで迅速かつ安価に食料品や日用品を配達することを約束しているが、批判的な人々は騒音やプライバシーの侵害といった個人的な問題を懸念している。しかし、ドローンが近隣地域に導入される際の本当の課題とは何なのだろうか?
それを確かめるため、筆者はオーストラリアの「ドローンゾーン」にしばらく滞在し、キャンベラやクイーンズランド州ローガンの試験地区で住民や地元ビジネス運営者にインタビューを行ってきた。その結果、騒音やプライバシーが本当の問題ではないことが分かってきた。
騒音やプライバシーのことよりも、地元の人々はより大きなインフラの問題、例えば交通渋滞や公共交通機関の不足、そして他の都市計画の失敗について話していた。そして、ドローン配送がこれらの問題に対する応急処置として提案されていることに不満を持っていたのだ。
Wingの仕組み
顧客にとって、Wingの仕組みはUberEatsやMenulogに似ている。人々はアプリを通じて注文し、支払いを行う。配達されるのは様々な店舗で売られている軽量で日常的なもの、つまりテイクアウトのコーヒーやお寿司、小さなスーパーの商品などだ。
違いは配送方法にある。小型の自律ドローンがセンサーとナビゲーションシステムを搭載し、空から荷物を配達する。
実証実験では、配達時間が信じられないほどの速さを記録した。注文から玄関先に到着するまでの平均時間は10分、最速の配達時間はわずか2分47秒だった。
Wingは最初の試験運用を、ニューサウスウェールズ州とオーストラリア首都特別地域の境界に近い田舎町ロイヤラで行った。それ以来、オーストラリアは同社のシステムの実験台になっている。
筆者はオーストラリアのドローン配送に関する調査で、キャンベラとローガンで試験運用を観察し、地元の人々にドローン配送を使った実際の生活についてインタビューを行った。
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