カナダの道路と橋を冬のあいだ無氷状態にする蓄熱技術

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2025年1月8日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

カナダの道路と橋を冬の間ずっと無氷状態にする蓄熱技術

カナダでは何十年にもわたり、塩や除雪車を使って氷雪対策を行ってきた。しかし、この方法には高いコストが伴う。

従来の方法は道路を損傷させ、環境に悪影響を及ぼし、冬の危険から道路利用者を必ずしも十分に守れるわけではない。こうした問題に対する革新的な解決策として、「ボアホール蓄熱技術(BTES: Borehole Thermal Energy Storage)」が注目されている。

BTESの技術は驚くほどシンプルだ。

もともとBTESは建物の冷暖房用に設計された技術であり、夏の間に太陽熱を回収し、地下に蓄える。そして冬になると、蓄えた熱を道路の下に敷設した配管を通じて路面に伝え、氷の形成を防ぐ。いわば「太陽光を活用した床暖房システム」のような仕組みである。

BTESシステムは、暖房用途だけでなく、建築物の基礎を強化する用途や、さらには地球温暖化の影響を受けるカナダ北部の永久凍土を冷却・安定化させる目的でも活用できる。

この技術はすでにスウェーデンやベルギーなどで導入されており、道路や自転車道、その他のインフラの冬季安全性向上に貢献している。BTES技術はカナダの冬の暮らしを大きく変える可能性を秘めており、真剣に検討すべき技術だ。

太陽の熱でカナダの道路を温める

冬の朝、カナダの高速道路を走行するのは危険を伴う。ドライバーたちは車線を維持しようと慎重に運転するが、見えないブラックアイス(透明な氷)が坂道を覆い、非常に滑りやすい状況を作り出す。わずかなスリップが連鎖的な事故を引き起こし、車が次々とコントロールを失う可能性がある。

しかし、この道路にBTESシステムが導入されていたらどうだろうか。アスファルトの下に埋め込まれた配管ネットワークが路面を温め、乾燥した状態を維持することで、氷の形成を防ぐ。結果として、事故のリスクが大幅に低減し、急勾配の道路もより安全に通行できるようになる。

橋梁も特に恩恵を受けるインフラの一つだ。橋は四方を冷気にさらされるため凍結しやすいが、BTESシステムによって橋の表面を温めれば、塩を使わずに安全な状態を維持できる。これは都市にとって一石二鳥であり、安全性の向上とともに、塩や化学物質による橋の劣化を防ぐメリットもある。

BTESシステムは完全な受動的(パッシブ)技術ではなく、効率的な運用には一定のエネルギーが必要だ。熱ポンプ、循環ポンプ、制御装置などの主要コンポーネントは電力を必要とし、これらが蓄熱した熱をボアホールから路面へと移動させる。

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