総務省、地域DX実証で8件採択

総務省は2026年7月3日、令和7年度補正予算「地域社会DX推進パッケージ事業」における実証事業(先進的通信システム活用タイプ)の二次公募について、採択案件8件を決定したと発表した。衛星通信やオール光ネットワーク(APN)など新しい通信技術を活用し、医療、交通、防災、農業、インフラ管理といった幅広い分野で地域課題の解決を目指す取り組みが選ばれている。

人口減少や少子高齢化、経済構造の変化が進むなか、持続可能な地域社会を築き、地方経済の基盤を強くするには、デジタル技術を地域に実装し、省力化や地域活性化を通じて課題を解決することが欠かせない。総務省はこうした考え方のもと、デジタル人材や推進体制の確保支援、AIや自動運転などの先進的ソリューションおよび先進的通信システムの実証、地域の通信インフラ整備に対する補助といった施策を組み合わせ、デジタル実装の好事例を生み出し、全国での早期実用化につなげる地域社会DX推進パッケージ事業を進めている。

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今回結果が公表された実証事業は、このパッケージ事業を構成する取り組みの一つで、先進的なソリューションの実用化を後押しする社会実証の担い手を、地方公共団体や企業、団体などから広く募るものだ。二次公募は2026年5月15日から同年6月4日まで実施され、合計60件の提案が寄せられた。外部有識者で構成する評価会による審査を経て、8件が採択案件として決まった。

同事業の一次公募は2026年2月27日から3月26日まで実施され、52件の応募のなかからシンボルプロジェクト2件、標準プロジェクト10件の計12件が同年4月22日に採択されている。一次公募と二次公募を合わせると、採択案件は20件にのぼる。衛星通信やローカル5G、APNといった新しい通信技術を軸にした社会実証の裾野は、この一年でさらに全国へと広がった形だ。

医療分野では、離島や山間部など通信環境が限られる地域での医療提供体制の強化を目指す提案が採択された。一般社団法人日本外科学会が代表機関を務める提案は、StarlinkとOneWebという複数の低軌道衛星通信を組み合わせ、可搬型の遠隔手術支援基盤を確立する実証研究で、北海道札幌市と福岡県福岡市を主たる実施地域とする。離島や山間部に加え、災害時など非平時の状況でも高度な医療支援を届けられる体制の構築を狙う。株式会社総合PRが代表機関となる提案は、低消費電力・低遅延・大容量の通信を可能にするAPNを活用したAI診断支援基盤の実証で、群馬県前橋市と神奈川県横浜市で展開される。

交通・物流分野では、空港運営の高度化と自動運転サービスの実装に向けた提案が選ばれた。住友商事株式会社の提案は、AI、自動運転、ドローン、ローカル5G、Starlinkを組み合わせ、複数の空港が連携してエアサイド業務を高度化し、地域空港の持続可能な運営モデルを構築するもので、北海道の釧路市、千歳市、稚内市、函館市、旭川市、帯広市、網走郡をはじめ、千葉県成田市、愛知県常滑市、大阪府泉佐野市、香川県高松市、広島県三原市、福岡県福岡市まで、7道府県13市郡にまたがる広域的な実証となる。NTT西日本株式会社の提案は、信頼性が高く遅延の少ない先進的な通信技術であるAPNとWiGigを活用し、遠隔からの介入を前提に複数車両の運行管理を行う自動運転サービスの実証で、宮崎県西都市で実施される。

製造業向けの提案では、トヨタ紡織株式会社が代表機関となり、ローカル5Gなどを活用したスマートファクトリーの実証を愛知県内で行う。地域の製造業における省人化と安全性の向上を両立させる狙いがある。

防災分野では、株式会社サーベイの提案が採択された。同社は徳島県徳島市を拠点に、南海トラフ地震を想定した映像伝送システムの実証などを過去にも手掛けてきた実績を持つ。今回の提案は、南海トラフ巨大地震の「学校最悪のシナリオ」を想定し、防災対応型のWi-Fi HaLow(850メガヘルツ帯)と準天頂衛星「みちびき」を組み合わせた自営の校区ネットワークシステムを、徳島市内に構築するものだ。

農業や鳥獣被害対策の分野では、株式会社キンシュウの提案が選ばれた。同社は山口県岩国市を拠点にドローンスクールを運営するなど、ドローン関連事業に取り組んできた。今回の提案は、衛星直接通信とAI、ドローンを組み合わせ、携帯電話の通信が届きにくい不感地帯における鳥獣対策のDXを実証するもので、山口県岩国市と香川県高松市が実施地域となる。

インフラ管理の分野では、日本工営株式会社の提案が採択された。山間部の通信不感地帯において、Starlinkやローカル5G、AIなどを活用した水上無人機によって、ダムの高度自動点検と統合監視を実現する実証を大分県日田市で行う。

採択された8件の概要は、準備が整いしだい総務省ホームページに順次掲載される予定だ。事業の主管課は総務省情報流通行政局地域通信振興課デジタル経済推進室で、応募に関する問い合わせ先の事務局はボストン コンサルティング グループ合同会社が務めている。

詳細は、総務省ホームページの地域社会DX推進パッケージ事業のページや、一次公募の選定結果を伝えた2026年4月22日付の報道資料、事務局を務めるボストン コンサルティング グループ合同会社のプレスリリースでも確認できる。