厚労省、2040年見据え地域医療構想の新指針

厚生労働省医政局は、2040年の医療提供体制構築に向けた「地域医療構想策定ガイドライン」をまとめた。地域医療構想及び医療計画等に関する検討会が2026年3月19日にとりまとめた内容を踏まえたもので、同月26日に開かれた社会保障審議会医療部会で審議された。同検討会は座長を遠藤久夫・学習院大学長が務め、2025年7月24日の初会合から議論を重ねてきた。都道府県は今後、このガイドラインを参考に地域医療構想調整会議で協議を進め、2028年度までに新たな地域医療構想を策定する。

高齢化と人材減少が同時進行

日本では団塊の世代が全て75歳以上となった2025年以降、2040年に向けて高齢者救急や在宅医療の需要がさらに増していく。その一方で急性期医療の需要は多くの地域で減少に転じ、生産年齢人口の減少によって医師や看護職員などの担い手確保も一段と難しくなる見通しだ。

Photo by soraneko/ Adobe Stock

地域医療構想は2014年の医療法改正によって医療計画の一部に位置付けられ、病床機能の分化と連携を柱に進められてきた。しかし85歳以上の高齢者増加と人口減少が同時に進む2040年以降を見据えると、入院医療だけでなく外来医療や在宅医療、介護との連携までを含めた地域全体の課題解決が欠かせない。こうした問題意識のもと、2025年12月5日に成立し同月12日に公布された医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)に基づき、新たな地域医療構想の制度整備が進められてきた。

医療機関の役割を五つに整理

新しいガイドラインの柱の一つが、医療機関が担う役割の明確化だ。各医療機関は、高齢者救急・地域急性期機能、急性期拠点機能、在宅医療等連携機能、専門等機能の四つから、自らが担う機能を選んで都道府県に報告する。大学病院本院はこれらとは別に、人材育成や広域的な診療を担う医育及び広域診療機能を報告する仕組みとした。

医療機関は、現在担っている機能に近いものと2040年に担う予定の機能、診療実績などを毎年の医療機関機能報告で示す。地域医療構想調整会議での協議を経て、遅くとも2028年度までに各医療機関が2040年に担う機能を決定し、以降はその内容と診療実績を都道府県へ報告していく流れになる。

急性期拠点は人口30万人規模に1カ所

手術や救急医療など医療資源を多く要する急性期拠点機能については、2040年の推計人口をもとに、人口20万人から30万人程度につき1カ所を確保することを基本の目安とした。人口が少ない地域では1カ所に絞り込み、人口100万人を超える大都市や患者の流出入が激しい首都圏の区域では、一律の目安に縛られず地域の実情に応じて協議する。

医療機関の決定にあたっては、全身麻酔手術の件数や救急搬送の受入件数といった診療実績データを基本にしつつ、医師の確保見込みや建物の老朽化、補助金や繰入金の活用状況なども含めて総合的に判断する。開設主体の違いによって優先順位を決めるような進め方は想定されておらず、公立・公的・民間の別を問わず、実際の診療実態に基づいて協議することが求められる。

病床の区分と稼働率を見直し

病床機能報告の区分も見直された。従来の「回復期機能」は、高齢者の急性期患者に治療と早期リハビリテーションを提供し在宅復帰につなげる機能を加えたうえで、「包括期機能」という名称に改められた。これにより病床区分は高度急性期、急性期、包括期、慢性期の四つとなる。

必要病床数の算出に用いる病床稼働率も改定した。実際の稼働実績の低い外れ値を除いた中央値をもとに、高度急性期78%、急性期83%、包括期87%、慢性期92%を基本の稼働率とする。そのうえで、医療DXなどによる効率化の効果を見込み、高度急性期と急性期に1ポイント、包括期に2ポイント、慢性期に0.5ポイントをそれぞれ上乗せする方針だ。従来の稼働率をそのまま用いると病床数が過大に推計される懸念がある一方、医療機関の経営の持続性や新興感染症への備えも考慮した結果である。75歳以上の急性期患者については、手術や処置を伴う患者の割合を踏まえ、5割を急性期需要、残る5割を包括期需要として見込む方式に改めている。

構想区域は人口20万人以上が基本

医療提供体制を協議する単位となる構想区域についても、人口20万人以上を基本としつつ、地域の実情を踏まえて見直すこととした。現在は二次医療圏の半数近くが人口20万人以下となっており、今後さらに人口減少が進めば入院医療を区域内で完結させることが難しくなる地域が増えるためだ。都道府県境をまたいで患者の流出入が多い区域では、隣接する都道府県と合同で調整会議を開くなど、区域を越えた連携体制の構築も促す。

協議の場となる地域医療構想調整会議は、都道府県単位の都道府県調整会議と、構想区域単位の区域調整会議の二段構えで運営する。議題に応じて参加者を柔軟に設定できるようにし、住民の意見を反映させる仕組みや情報公開も強化する方針だ。

2028年度に機能決定、2035年度に成果確認

新たな地域医療構想は2026年度から2028年度にかけて策定作業を進める。2026年度から2027年度上半期にかけて医療需要や医療提供体制の現状をデータで分析し、構想区域の点検・見直しを行ったうえで、2028年度までに急性期拠点機能を担う医療機関名を含めた具体的な内容を協議し、地域医療構想として取りまとめる。策定後の2029年度頃には、この内容を踏まえた第9次医療計画を策定する予定で、地域医療構想は医療計画の上位概念として位置付けられることになる。

取組の進捗はロジックモデルなどのツールを使って定期的に点検し、必要に応じて見直す。2035年度頃を目途に、医療機関機能の役割分担などについて一定の成果を確保することを目指す。人口構造の変化に地域差が大きいことを踏まえ、都道府県には、データに基づく協議を通じて医療機関や住民の理解を得ながら、地域ごとの実情に応じた提供体制を築くことが求められる。