【10月6日古川俊治デジタル大臣会見要旨】相次ぐ情報流出に3つの対策 AI法見直しへ新WG

古川俊治デジタル大臣は2026年10月6日、記者会見を開いた。冒頭では、不正アクセスによる個人情報の流出被害を防ぐため、国民に3つの対策を呼びかけた。続いて科学技術政策担当大臣として、京都で開かれた第23回国際科学技術関係大臣会合の成果を報告した。人工知能戦略専門調査会の開催と、AI法の見直しに向けた新たなワーキンググループの設置も発表している。質疑では、大手企業で相次ぐ情報流出への受け止めや、ノーベル生理学・医学賞の評価、AI法見直しの進め方などについて答えた。

パスワード使い回しに警鐘

古川大臣はまず、企業や行政機関を標的とした不正アクセスが相次ぎ、大量の個人情報が流出する事案が起きていると説明した。

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流出する情報は氏名や住所、電話番号、メールアドレスにとどまらず、IDやパスワード、クレジットカード情報、運転免許証の情報に及ぶこともあるという。いったん外部に出た情報は、なりすましや不正送金、詐欺といった二次被害につながるおそれがある。大臣は、サイバー攻撃は企業や組織だけの問題ではなく、国民一人ひとりの対策が被害の防止につながると訴えた。

そのうえで大臣は、国民に3つの対策を求めた。1つ目は、パスワードの使い回しをやめることだ。複数のサービスで同じパスワードを使っていると、1つのサービスから情報が漏れただけで、ほかのサービスにも不正にログインされる危険がある。2つ目に挙げたのは、多要素認証の活用である。IDとパスワードが漏れても、スマートフォンによる認証やワンタイムパスワードを設定しておけば、不正ログインを防げる可能性が高まる。3つ目は、不審なメールやSNSへの警戒だ。実在する企業や行政機関を装ってIDやパスワードを盗み取るフィッシング被害が増えていることから、大臣はメールなどに記載されたリンクを安易に開かず、公式サイトや公式アプリからアクセスするよう促した。攻撃の手口は日々巧妙になっているが、基本的な対策を徹底すれば多くの被害は防げる。大臣はこう強調し、「自分の情報は自分で守る」という意識を持つよう呼びかけた。

質疑では、大手企業で大規模な個人情報の漏えいが相次いでいることへの受け止めと、政府の対応方針を問われた。大臣は、サイバー攻撃が質・量ともに増え、手口も巧妙になっていると指摘した。国民生活に大変な影響を及ぼし、企業活動にも大きな支障を与えているとの認識も示した。企業と個人の双方に基本的な安全対策の徹底を求めたうえで、個々の事案は各企業が調査を進めているとし、結果を見て適切に判断する考えを述べた。国としては、内閣官房国家サイバー統括室(NCO)を中心に、関係省庁や被害を届け出た企業と連携して取り組みを進めるという。

「京都ビジョン」に賛同

古川大臣は、科学技術政策担当大臣として京都での一連の日程についても報告した。大臣は10月4日、京都で第23回国際科学技術関係大臣会合を開き、議長を務めた。会合には23の国・地域の科学技術大臣らが参加した。科学技術の社会実装をテーマに、基礎研究から社会実装に至るまでの支援や、国際連携の必要性について議論したという。

大臣会合に続いて、大臣は米国が主催した「京都ビジョン」の発表イベントに参加した。大臣の説明によると、京都ビジョンは科学を取り巻くエコシステムを刷新し、「科学の黄金時代」の実現を目指す文書である。大臣はイベントの場で、日本として賛同する立場を表明した。

その後、大臣はマイケル・クラツィオス米国大統領府科学技術政策局長と会談した。日米の科学技術分野における強固な協力基盤を確認するとともに、2025年10月に署名した「日米間の技術繁栄ディールについての協力に関する覚書」の進捗を確認する共同声明を取りまとめた。大臣は、京都出張の成果を今後の政策にしっかりと生かしたいと述べた。

会合で印象に残った点を問われると、大臣は、子どもたちに科学技術の面白さをどう伝えるかという話題が最も盛り上がったと明かした。理系教育に力を入れても子どもの関心がなかなか高まらないという悩みは、ほぼすべての参加者に共通していたという。ある国の女性大臣は、理系のキャリアは長すぎるとして、さまざまな経験を積みながら最終的に博士号を取得できる道筋に変えようとしていると紹介した。英国の大臣からは、科学者がもっと子どもたちに語りかけるべきだとの意見が出た。レジェンドと呼ばれるような科学者のメッセージがあれば、子どもの意欲も高まるとの考えである。

もう一つ話題になったのが、基礎研究の大切さだった。政府が関わると研究が応用研究に偏り、短期的な視野になりがちだとの発言もあったという。大臣は、科学技術にかける財政とその成果のあり方について、各国とも日本と同様に悩んでいると感じたと振り返った。

光遺伝学のノーベル賞を評価

ノーベル生理学・医学賞について問われた大臣は、日本人研究者が受賞する可能性も高いと考えていたと述べた。そのうえで、光遺伝学を切り開いた3人の受賞をたたえ、とりわけカール・ダイセロス氏の研究はよく知っていると明かした。光のオン・オフによって神経の働きを調節できるようにした3人の業績を、神経科学の新たな基礎を築いた本当に革命的な発見だと評価した。大臣によると、この技術によって脳の機能の解明や神経の病気に対する新しい治療法の開発が進んでいる。日本からも挑戦的な研究が生まれており、政府として支援していることにも触れた。研究成果が新しい治療法として患者のもとに届くことを楽しみにしていると語った。

AI法見直しへ新WG

AI戦略については、今月下旬ごろに人工知能戦略専門調査会を開くと発表した。本年7月に開いた人工知能戦略本部で、高市早苗内閣総理大臣から受けた指示について、具体化に向けた議論を始める。指示の内容は、基本計画に掲げる「日本AX」の具体像の提示、バーティカルAIの開発を進める領域別戦略の具体化、AI法を含む関連制度の能動的な見直しなどについて、検討を加速するというものだった。

このうちAI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)を含む関連制度の見直しについては、専門調査会の下に新たなワーキンググループを設け、速やかに議論を始める。AIガバナンスを巡って国際的にもさまざまな議論が交わされていることを踏まえた対応だという。

質疑でワーキンググループに期待する議論や取りまとめの時期を問われた大臣は、AI法は日本をできる限りAIを活用しやすい国にすると同時に、リスクにも備えるという考え方で作られたと説明した。これまでは事業者に強制的な措置を取らず、協力を求める形で進めてきた経緯にも触れ、今後のあり方を巡って議論があることは承知しているとした。そのうえで、有識者による議論の中で、法的な対応が必要かどうかも含めて検討していく考えを示した。AIの進展は非常に速く、信頼性を巡る議論も世界的に活発になっている。大臣はこうした動向を十分に検討し、次の法改正に生かすべきかどうかも含めて議論したいと述べた。

古川大臣は今回の会見で、情報流出への3つの対策を呼びかけるとともに、京都での国際会合の成果と、AI法の見直しに向けたワーキンググループの設置を報告した。AI法については、法的な対応が必要かどうかも含めて、有識者による議論を始める考えを示した。

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