解像度を上げて考える、医療・ヘルスケア新規事業開発のポイント

医学・行政・ビジネスの観点から医療・ヘルスケア業界の事業戦略を考える本連載。社会のデジタル化が進み、医療・ヘルスケア領域でもこうした事業モデルが増えている。成功する事業をつくるために必要な視点について、ニーズという要素を深堀して考える。

最近になって、より一層、デジタル×医療・ヘルスケアの領域の新規事業開発の相談が増えてきました。遠隔医療や医療アプリを活用した新規事業で、大企業からもベンチャーからも相談をいただいています。ヘルスケアビジネスが改めて盛り上がってきていることを感じて、嬉しい限りです。多くの相談をいただく中で、筆者が改めて新規事業開発の考え方を大企業やベンチャーの方々に向けて話すことも増えました。「目からウロコ」だと喜んでもらえているので、今回はぜひその内容を共有したいと思います。

「顧客ニーズ」を分解して
考える

新規事業開発をする人で「ニーズドリブンで事業を考えないといけない」ということを知らない人はいないでしょう。ここでいう「ニーズドリブン」とは、“顧客が求めているものをもとにして”という意味です。今回はこれをより深堀してみましょう。

筆者は、“顧客が求めている”という状態は大きく2つに分かれると考えています。一つは現時点でニーズがあり顧客が求めている状態、もう一つは顧客がニーズに気づいていない・現時点ではニーズがないが、未来で顧客がニーズを感じてその商品やサービスを求めるようになるという状態です。

新規事業開発には、“大いなる失敗パターン”というものがあります。それは、「ニーズがない商品を開発してしまう」ことです。これは、前述の「顧客ニーズの状態」の後者に当てはまります。新規事業を企画した当人は、「顧客がニーズに気づいていない・現時点ではニーズがないが、将来顧客がニーズを感じてその商品やサービスを求める」と考え・予想しているのですが、それが間違っており、顧客がニーズに気づいていないのではなく、そもそも求めていなかった・商品やサービスをリリースした時期にはまだ顧客のニーズがなかったという状態です。「商品やサービスをリリースした時期にはまだ顧客のニーズがなかった」という状態の場合、しばらく待てば顧客がニーズを感じだして商品やサービスが求められるようになることもあるでしょうが、それは数年、長いと数十年かかることかもしれません。それだけの間、事業を赤字の状態などで保有することができるかどうかが問題となります。

また、新型コロナによる“ニューノーマル”の出現という事象でもわかるように、新しい価値観や新しい行動パターンが生まれると、それに付随して新しいニーズが生まれやすくなります。このパターンの新規事業開発は「今までにないものを創る」ためにとてもかっこよく見えますし、メディア受けもしやすいのですが、新規事業開発の中で一番難しい方法だと言ってよいでしょう。

顧客がすでに利用している
サービスへの「支出」に注目

では、「簡単」に新規事業開発をするためにはどうしたらいいのでしょうか。こんなとき、筆者はターゲットとしたい顧客の「支出」に注目するようにお話ししています。つまり、顧客がすでにお金を払っている商品やサービスに注目するということです。

事業開発をしてそれを成り立たせるためには、必ず顧客からお金を払い続けてもらわないといけません。その際に顧客が支払うお金は、すでに支払いをしている商品やサービスがA社からB社に移るものなのか、新しくお金を確保して払わないといけないのかで戦略は異なってきます。例えば、前者は美容室をX美容室からY美容室に変えているのと同じで、顧客からすると美容室へ行くための支出は変わりません。しかし、新たに費用を確保しなければならないのなら、その商品やサービスにニーズがあるかだけでなく、顧客が費用を確保できるかという問題も生じてきます。

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