異業種による買収が開いた活路 M&Aで障害者の働く場所をつくる

障害者が経済的に自立するための第一歩である仕事探しだが、就労の場が少ないことが問題だ。福岡のB∞Cグループでは、この問題を解決する方法として企業買収を活用した。障害者が働く場をつくるとともに、人手不足に悩む工場の生産性を向上させ、売上アップも達成した。

島野 廣紀 B.Continue 代表取締役社長

B∞C(ビーエイトシー)グループは、福岡市にある福祉企業グループだ。一般就労の難しい障害者が、スタッフの支援を受けながらリハビリ・訓練も兼ねて働ける事業所(就労継続支援A型事業所)を運営する一般社団法人や、共同生活援助、通信制高校、そして軽度障害者の就労の場となる一般企業の経営などを手掛けている。グループの各企業の社長を務める島野廣紀氏は、もともとビジネスフォンやOA機器等の通信機器販売などを手掛けており、異業種から福祉事業に参入した。

「福祉事業を立ち上げる前は、障害のある人と接する機会もなく、本当に仕事ができるのかと疑問に思っていました。しかし、紹介で見学に行った事業所は、スタッフと利用者の区別がつかないほど皆が協力して働いていました。障害者は働けないというのは自分の勘違いだと思い知らされ、この分野への参入を決めました」と島野氏は振り返る。

地軽度障害者の働く場を
M&Aにより確保

福祉事業を開始してからは、パートナー企業の仕事を請け負う、携帯電話ショップや飲食店を就労継続支援A型事業所として運営するなどして、軽度障害者に働く場を確保してきた。ただ、一般就労を希望する人が増える中で、働く場の確保は常に問題だった。特に、ストレス社会で急増しているうつ病などの精神障害を持つ人が求める、職場でのコミュニケーションが少なくて済む仕事は限られている。

この問題を解決したのが、同グループの中核企業であるB.Continueによる、2件のM&Aだ。島野氏は当初、企業買収は全く頭になかったという。一方、福祉企業として、利用者には長期にわたって一般企業で働いてほしい、という希望があったが、せっかく就職しても1か月~1年ほどで退職してしまうケースを多く見てきた。国が定める障害者の法定雇用率のルールに従うため、企業も障害者採用を進めているが、短期での離職が課題になっている。そこで、障害のある働き手に配慮した職場をつくるために、グループでも新ビジネスを立ち上げたが、規模が小さく、雇用できる人の数は少ない。多くの人が働ける事業をゼロから自社で立ち上げるには時間がかかる。行きついた解決策が、買収を通じた働く場の確保だった。

まず2020年1月に、知り合いからの紹介で福岡市の冷凍総菜加工工場「那珂川キッチン」を買収。2021年6月には、福岡市の水産加工会社である福岡丸福水産が、M&A仲介企業を通じてグループに加わった。

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