メガトレンドから医療・ヘルスケアビジネスの未来を考える

医学・行政・ビジネスの観点から医療・ヘルスケア業界の事業戦略を考える本連載。新年度を迎え、新たなビジネスの構想を練っている方も多い時期だろう。診療報酬が改定され次のフェーズに入った医療業界だが、ここで改めてメガトレンドをおさえておきたい。

事業成長の背景にある
「メガトレンド」

医療・ヘルスケアの新規事業をするときにはまず、ニーズドリブンで事業コンセプト「誰の何をどのように解決するか」を決め、なぜ自社(自分)がその事業をできるか、なぜ2年前でも2年後でもなく今なのかということも考える。そして事業コンセプトが「医療現場」「医療制度」「ビジネス」とも合致しているかを考えることが大切だということを、この連載では何回かお伝えしてきました。こうして立ち上げた事業を持続的に成長させるためには、筆者が「メガトレンド」と呼ぶ「社会の変化」「医療政策」「価値観の変化」に注目する必要があります。

今回はその中でも情報収集が難しい「価値観の変化」について考えてみたいと思います。

価値観の変化をどう捉えるか

まず、「価値観」として必ずおさえるべきなのは「世代間の価値観」です。“Z世代”のように年代で区切られることもありますが、それに限らず、さまざまな立場・環境の人と話をすることで多様な価値観を理解する必要があると筆者は考えています。

医療業界では医師は平均年齢が約50歳、開業医に限って言えば平均年齢は約60歳の集団ですので、身の回りにいる人たちだけと話していては価値観が偏ってしまう可能性があります。意識してさまざまな年齢の医師と話をする必要があります。

このような「価値観」を今後の持続的成長の切り口で考えると、10年後は「今の10歳代がやっていること」が社会の価値観の主流になってくると考えています。例えば、Instagramはどうでしょうか。これは2000年前後に流行していた「プリクラ」から発想できるかもしれません。当時の若者がもっていた価値観が、後になって一般化されたという風に捉えられないでしょうか。同様に考えたとき、今の10歳代、特に小学生の間で流行っているのは、『フォートナイト』や『マインクラフト』『SPLATOON』といったゲームです。これらのゲームは3次元で、世界観を創るようなものであることが特徴です。これは、いま動きが起こり始めているメタバースが一般的になる社会にもつながっていくのではないかと考えられます。

時代を先取りし続ける
ダニエル・ピンク氏の示唆

また、今後の日本の変化を考えるときには、日本の一歩先を行くアメリカの変化を調べることも欠かせません。ソフトバンクの孫正義会長は「タイムマシン経営」として、海外で成功したビジネスモデルやサービスを日本で展開する経営を行ってきました。アメリカの価値観の変化を調べる際に筆者が注目しているのはダニエル・ピンク氏です。読者の皆さんもすでにご存知かもしれませんが、ピンク氏は未来を予見するような内容の著書で有名で、『フリーエージェント社会の到来』『ハイコンセプト』、そして『人を動かす、新たな3原則』などの名著があり、どれも示唆に富む内容で、これからの日本の変化を想像しながら読むと非常に面白いものばかりです。そして今年2月には新刊『Power of Regret』(未邦訳)が発売されました。

医療・ヘルスケア業界は、日本の変化に一歩遅れて変化していくため、数年後に到来すると予想されることに対して、前もって準備できるともいえます。20年以上前に執筆された『フリーエージェント社会の到来』では、組織人間の時代は終わりフリーランスの生き方が増えていくこと、仕事が組織で行われるものからプロジェクトで行われるものになること、オフィスではなく家で仕事をするようになることなどが指摘されています。こうした変化はコロナ前から進んでいましたが、コロナ禍で決定的になりました。

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