ジオテクノロジーズ 地域と進めるデジタル・ディスラプション

パイオニアの100%子会社として設立され、創立30年を迎えるジオテクノロジーズ。人を様々な場所へナビゲートするカーナビなどのソフトウェア開発を手掛ける企業だ。保有する先進技術やデータ資産を活用した地域創生に貢献する新規事業について、代表取締役社長CEOの杉原博茂氏に話を聞いた。

杉原 博茂
ジオテクノロジーズ 代表取締役社長CEO

地図に様々な情報を組み合わせ
予測可能な世界を創出

デジタル地図業界の雄であるジオテクノロジーズは2021年6月にパイオニアから独立し、新体制となった。その際に代表取締役社長CEOに就任したのが杉原博茂氏で、新たに「地球を喜びで満たそう」というミッションを掲げた。

「地図は自然災害とも大きく関わっており、私たちの事業は日本列島に支えられて継続できていると感じます。様々な経済活動の中でも、道路や施設などの地物をデジタル化する事業を行う私たちは日本という場所の恩恵を最も受けているわけですから、日本列島を含めた地球を喜びで満たすことこそが私たちの使命だと考えました」

ミッションと同時に「予測可能な世界を創る」というビジョンも打ち出した。ジオテクノロジーズには、新しい道路や施設の情報がそれらの完成前に入ってくる。ゲームのような仮想の世界ではなく、自然物や建造物などの実在する地物に、少し先の情報を加えた現実世界のデジタルデータを持っていることが同社の強みであり、それらを生かして企業や自治体のエンタープライズ・メタバースに貢献したい考えだ。

「新しい道路が開通するとなれば渋滞緩和やCO2排出削減を予測できますし、飲食店は人流の変化に合わせて仕込みの量を変えるといった対策が打てます。関連情報はSNSでも収集可能になってきていますが、地図という確かな位置情報に様々なレイヤーのデータを重ね合わせ、予測可能な世界を創ることができるのがジオテクノロジーズです」

既存のものから新しいものを生む
「デジタル・ディスラプション」

アメリカでも大都市と地方都市の間にはデジタル格差があり、人口は減少傾向にある。しかし、日本のような大都市一極集中はなく、経済も上向きだ。杉原氏はその理由を「国と地方行政、そして企業が一体となってデジタル・ディスラプションに真剣に取り組んでいるから」だと指摘する。

「デジタル・トランスフォーメーション(DX)は日本独特の表現で、主なゴールはコスト削減です。一方、デジタル・ディスラプションは、既存のものから新しいものを作り、新しい収入源を創出することを意味します。私たちはそれを地方自治体のみなさんと一緒に進めていきたいと考えています」

事例の一つが、同社地図をベースにしたアート作品「GT MAP ART COLLECTION」の制作販売だ。作品はNFT化して唯一無二化する。1つの作品は10枚までとし、ロット番号を付与するため、旅先や故郷の地図をアートとして保有できるだけでなく、収集対象にもなる。作品の販売収益の10%は地域を管轄する自治体に寄付する仕組みとした。

地図をベースにしたアート作品「GT MAP ART COLLECTION」

「当社には世界にアプローチするデジタル技術と、多様な価値観を持つ人たちにアクセスする技術力があります。先日、東京都東部や渋谷など、日本の美しい街並みをアート化し売り出したら、1点5万円で販売できました。ほかの地域でも由緒ある寺社仏閣や日本庭園をモチーフにアート作品を作れば、世界中に地域を知ってもらうきっかけになります。お金にならないと思っているものがお金になる、それが革新です」

同社には世界中の人々に、地域に来てもらうことを可能にする技術もある。その一つが、地図上のランドマークアイコンに緯度と経度の位置情報を付与してNFT化した「GT Building Collection」だ。第1弾として日本にある14の城の絵をアート化して販売したところ、こちらも好評だった。

城郭などのランドマークアイコンに位置情報を付与してNFT 化した「GT Building Collection 」

地域の遊休資産を活用する
ジオマーケティング

地域にある歴史上の人物ゆかりの建造物や場所を切り取ったアートをNFT化し、証明書やロット番号を付けて販売するプロジェクトも推進中だ。

「アート作品のTシャツやスマホケースなど、物販も可能です。私たちの技術を使えば、マネタイズできていない遊休資産を使って新しいビジネスを創出し、インバウンドを呼び込むジオマーケティングが可能になります」

場所の情報を未来永劫残すことに価値があると杉原氏は考えている。本やCDはデジタルで保有すればいつでも読んだり聞いたりできるが、地域や地図はそこが難しかった。しかし、同社の技術を使って緯度や経度ととともに情報を記録することで、地球がある限りそこを訪れることが可能になる。自分の生家や故郷の情報を残しておけば、自分が生きたリアルな世界を孫やその先の世代にも伝えられるだろう。

「私はこれからのデジタルにはエモーションや共感というものが必要だと思っています」

同社ではこのような地域との協業を推進する一方で、自動運転向けの高精度地図や先進運転支援システム「ADAS」などの技術をさらに磨き上げて、EVやスマートシティのソリューションの一つとしたいと考えている。また、1日10億ログという膨大かつ高精度の人流データを持っていることも同社の強みで「商圏分析やマーケティングに動的及び静的情報を組み合わせて、店舗展開などのマネジメントをお手伝いできます」という。

「エンタープライズ・メタバースとは『現実の世界を生き写しにしていること』。現実世界のデータを持っている強みを生かし、世界に広がる100兆円以上のメタバース市場に挑戦していきます」

 

杉原 博茂(すぎはら・ひろしげ)
ジオテクノロジーズ 代表取締役社長CEO

 

お問い合わせ先

ジオテクノロジーズ株式会社
URL:https://business.mapfan.com/contact/

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