困難を乗り越える人材を育てる事業 脱炭素社会へ事業変革を進める

加速する脱炭素化への動きにより、石油業界を取り巻く環境は大きく変化している。1911年の創業以来、石油を中心とした事業で発展してきた出光興産。2022年11月に発表した中期経営計画で、2050年までの長期ビジョンを打ち出した。

木藤 俊一(出光興産株式会社 代表取締役社長)

出光興産は、2022年11月、2023~25年度を対象とした中期経営計画を発表、「2050年ビジョン」を示した。2021年5月に公表した見直し中計では2030年ビジョンとして「責任ある変革者」を定めていたが、今回の中計では、エネルギーの未来と自社のありたい姿を、より長い時間軸でとらえようとしたという。2050年の事業領域として「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つを定義し、それぞれの社会実装を進めることで、現在の事業ポートフォリオを変換していく、とした。

出光興産は、出光佐三氏が石油の将来性に着目して1911年に創業した企業だ。その活動は2016年に映画化された百田尚樹原作の「海賊とよばれた男」のモデルになった。戦前は国内で石油の販売権が得られず、海外に活路を求めて成功を収めたものの、敗戦で海外資産をすべて失うことになった。社員が「これで会社は終わった」と肩を落とすなか、出光佐三は「何もなくなっても人がいる。それが資本であり、財産」と、当時1000人前後の従業員を1人も解雇することなく様々な事業に取り組み、会社を再び軌道に乗せた。その後、日本の高度成長と歩調を合わせて事業を拡大し、1957年には徳山市(現在の山口県周南市)で製油所の操業を開始。またマイカーブーム下のガソリン需要にこたえるため、全国に販売網を広げた。

人を重視する社風は一致
経営統合後も姿勢は変えず

出光興産社長の木藤俊一氏は「どんな未来が来ようと、どんな商材を扱おうと、人さえしっかりしていれば企業は大丈夫。創業者である出光佐三の想いから続く「真に働く」が社員一人ひとりのあり方であり、企業理念です」と話す。

直近の大きなエポックは、2019年4月の昭和シェルとの経営統合。これは、国内のガソリン需要の減少を背景にしたものだ。共に100年以上の歴史を持つ両社の統合と、統合新社の企業理念の成文化にあたっては、互いの創業者や先人が大事にしてきた言葉やその背景にある価値観、風土を拾い上げ、理解しあう作業を丁寧に行ってきた。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り71%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。