経産省 グリーントランスフォーメーションに向け基本構想を公表
2050年カーボンニュートラル達成に向け、企業による温室効果ガス削減の取組を促進する構想を国が打ち出した。経済産業省が、2022年2月1日に公表した「GXリーグ基本構想」だ。GXは「グリーントランスフォーメーション」の略で、2050年カーボンニュートラル達成や、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた、経済社会システム全体の変革を指す。
基本構想は、「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」における議論の成果。GXに積極的に取り組む企業群を「GXリーグ」と名付け、その取組を通じて目指す世界、参画企業の考え方、取組・プロジェクト、参画企業に対するインセンティブ・支援と、GXリーグの設立準備にむけた進め方について、大枠を示した。
経産省がGXリーグ基本構想で示した今後の活動予定。基本構想賛同企業の募集は3月31日までを予定している
特に参画企業の考え方として、3つの取組を実施することを要件とする方向だ。その3点とは、(1)自らの排出削減の取組(1.5度努力目標実現に向けた目標設定と挑戦、その公表)、(2)サプライチェーン(SC)での炭素中立に向けた取組(SC上の幅広い主体に能動的に働きかけ、脱炭素を目指す)、(3)製品・サービスを通じた市場での取組(グリーン製品の積極・優先購入など)。
構想の公表と併せて、「GX リーグ設立準備事務局」を立ち上げ、構想に賛同する「基本構想賛同企業」の募集を開始した。そして2022年度にも、GX リーグの実装に向けた詳細設計の議論と取組の実証を開始するため、準備を進める。本格稼働は2023年4月以降となるが、初期に賛同した企業とは、GXリーグの活動開始を目指した準備を共に進める予定だ。
GXリーグで実施を計画しているプロジェクトは3つある。1つ目は、2050年に実現される、サステイナブルな脱炭素社会の未来像を議論・創造する場。2つ目は、カーボンニュートラル時代の市場創造やルールづくりを議論する場。3つ目は、企業が自ら掲げた目標に向けて、自主的な排出量取引を行う場。2022年秋以降には、カーボン・クレジット市場も含む実証事業を実施する計画だ
同時に、国は企業に対するインセンティブを用意する方針だ。例えば、GX リーグに参画し、脱炭素の取組の実践で条件を達成した企業には、補助金やその他優遇措置を検討する。また、GXに向けた賛同項目や取組の実施内容をまとめ、情報を公表することで、金融市場・労働市場での新たな商品・サービスの創出を促す。これにより、例えば変革のために必要な資金や人材の供給、オープン・イノベーションによる事業機会拡大などのメリットを企業が得られるようにする。
脱炭素を目指す循環構造をつくる
2050年のゴールと、2030年に設定した中間目標を達成するには、官・学・企業・生活者それぞれが、これまでとは違った意識を持ち、行動を変えていかなければならない。目標は遠く、巻き込むべき関係者は多い。
このため、GX リーグでは「経済社会システム全体の変革」として、市場を介した企業と生活者の関係から、脱炭素に向けた新たなうねりを生みだそうとしている。温室効果ガス排出削減に向けた企業の意識・行動変容が、単独で生じるのではないという考えに基づくものだ。GXから生まれた価値が提供される「新たな市場」の創造を通じて、生活者の意識・行動変容が引き起こされ、それがまた企業の意識・行動変容につながるという循環構造をつくることを目的としている。そしてこのサイクルから、企業の成長、生活者の幸福、地球環境への貢献を同時に実現していくという。
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