オンライン旅行会社対決 アドベンチャーvsエアトリ

2000年代以降、インターネットの進化とともに成長してきたOTA(オンライン旅行会社)。競争激化の中、独自の戦略で急成長する2社がある。アジアを足がかりにグローバル市場を目指すアドベンチャー、幅広く事業多角化を進めるエアトリ、両社の方向性を見る。

オンラインならではの大きな可能性を追求するOTA2社

インターネット上で航空券やホテル、旅行商品などの予約ができるOTA(オンライン旅行会社)は、1990年代半ばに米国「エクスペディア」が誕生して以降、インターネットの進化やスマートフォンの普及に伴って、2000年代に急成長してきた。日本国内での利用率は、欧米に比べればまだまだ低いが、それだけに伸びしろが大きく、競争も激化している。

そうした中、急成長する2社がある。アジアを足がかりにグローバル市場を目指すアドベンチャー、幅広く事業多角化を進めるエアトリだ。

アドベンチャーは2006年に設立され、ビッグハートトラベルエージェンシーの子会社化を皮切りにM&Aを繰り返して規模を拡大してきた。2008年に運用を開始したオンライン予約サイト/アプリ「skyticket」は、現在、搭乗日と出発・到着空港名を指定するだけで、LCCを含む世界の航空券の横断検索・表示、旅行商品の予約・販売、レンタカー予約などが可能な利便性の高いサービスとなっており、2023年2月には、スマートフォンアプリの累計ダウンロード数が1,900万を突破した。低価格帯商品が充実している点が特徴で、多くの言語に対応していることもあって海外ユーザーも多く、今後さらなる多言語化を進めて、低価格帯商品の総合予約プラットフォームとしての存在感向上を目指す。

同社は現在、旅行需要が拡大し、圧倒的なシェアを持つOTAが少ないアジア市場に注力し、2022年には、韓国、インド、フィリピン、バングラデシュに相次いで子会社を設立した。そのアジアを足がかりにグローバル市場へ進出し、「日本初のグローバルOTA」となることが同社の目標で、将来的な東南アジア進出によって1,000億円、グローバル領域への進出で1兆円規模の営業利益を目指して、skyticketのサービス拡大とシステム強化を進めている。

一方、エアトリは2007年に設立され、航空券販売サイトを運営するアイ・ブイ・ティやValcomの子会社化などM&Aによって成長してきた。現在、エアトリインターナショナル(旧DeNAトラベル)の子会社化によって獲得した総合旅行プラットフォーム「エアトリ」をコア事業として、ITオフショア開発、国内外旅行者向けWi-Fiレンタル、メルマガサービス最大手「まぐまぐ」子会社化によるメディア事業、「エアトリCVC」を通じた投資事業など、グループのアセットを活用した多角的なビジネスを展開する。直近では、その事業ポートフォリオに地方創生事業も加わり、地方の人口減少などの社会課題を「観光テック」「HRテック」によって解決し、交流人口拡大、地域経済活性化を目指す。

現在、同社は「エアトリ “リ・スタート”」という戦略のもと、事業ポートフォリオの分散と再構築をよりいっそう戦略的に推し進めている。積極的な広告投資による認知度向上や、公式アプリからの予約で20%の「エアトリポイント」を還元するキャンペーン、海外旅行予約時でもポイントが貯まるサービスといったコア事業の充実化に成功した一方、ココナラスキルパートナーズの投資ファンドへの出資、「エアトリCVCアワード」創設など、IPOポテンシャルの高い領域への投資事業による収益貢献も狙う。エアトリが目指すのは、既存事業と新規事業の成功によって、2023年9月期の通期営業利益を10億円まで引き上げることだ。さらに、2029年度以降の連結取扱高5,000億円を目標に、中長期成長戦略「エアトリ5000」も策定している。

コロナ禍で旅行需要が大きく落ち込んだ一方、オンラインの利便性についての認識は高まった。旅行需要が回復しつつあるなか、OTAの便利で多様なサービスを利用する旅行者もいっそう増加していくことが期待される。OTA各社の成長余地はきわめて大きい。

両社の概要

アドベンチャー

設立 2006年
本社 東京都渋谷区
代表 中村 俊一(代表取締役社長)
資本金 32億8,156万円
従業員数 連結:170名
主な
事業内容
●コンシューマ事業(旅行予約サイト「skyticket」運営)
●投資事業
主な
グループ会社
● 国内:
TET(航空券の発券・仕入)
ラド観光(ツアー企画・販売)
Vacations(宿泊事業)
●海外:韓国、バングラデシュ、インド、
フィリピンに計4社

出典:ホームページ(会社概要)、有価証券報告書

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