「仕組みのイノベーション」で医療課題を解決するホスピス
慢性期・終末期での医師機能を病院からクリニックへアウトソーシングし、強固な看護体制で患者の療養継続に応える――この従来にない発想で、社会課題を解決している医療施設型ホスピス「医心館」。運営するアンビスホールディングス代表の柴原氏は、事業発想の肝は「仕組みのイノベーション」にあると語る。
医療依存度が高い患者の退院後の
受け皿となるホスピス「医心館」
少子高齢多死化社会の到来に伴い、国は病院完結型医療から地域完結型医療へと政策転換を図っている。これは、病院が果たすべき機能・役割を、救命救急、急性期における診断・治療へと分化、強化する施策だ。結果的に、療養場所や最期を迎える場所は在宅(自宅や施設)へシフトする。そこには、がんの終末期や人工呼吸器を装着した人など、医療依存度が高い人でさえ退院を余儀なくされ、その後の行き場が見つからないという問題が生じている。
医療施設型ホスピス「医心館」は、そのような人々を積極的に受け入れ、引き続き必要な医療と住まいを提供し、最期に看取りまで行う施設として、2014年に誕生。全国18都県で50施設を展開している(2022年2月末時点)。医心館は、有料老人ホームに訪問看護・介護の事業所を併設した形態を採っていて、それ自体に目新しさはない。しかし、従来の施設では医療依存度が高い人を積極的には受け入れてこなかった。医心館では、なぜそれが可能なのか。運営会社であるアンビスホールディングス代表の柴原慶一氏は、その理由を「強固な看護体制の整備に尽きる」と言い切る。
「かつては病院にいるはずとされた方々へ、引き続き責任ある医療、ケアサービスを提供するため、医心館では看護・介護体制の質と量の強化に力を注いでいます。直前まで病院におられた方々へのケアですから、当然、その体制の質と量は病院に準ずるものであるべきと考え、これを実践しています」
質量ともに整ったケアの提供は理想的だが、それで事業として採算は合うのだろうか。その心配を察したかのように、柴原氏は言葉を継ぐ。
「収益構造に特徴があります。多くの事業者は(家賃、食費、管理費などの)ホテルコスト収益と介護保険収益の2層ですが、医心館は医療保険収益が加わった『3層』になっています」
入居者へ手厚い看護と介護を提供し、前述の医療課題へのソリューションを示しながら、しっかりと収益が上がるビジネススキームを確立したこと。それが、同業他社との大きな違いなのだ。収益を上げた後は、医心館を必要とする次の地域へ展開し、その積み重ねにより、各地域から社会全体へと課題解決が拡がる好循環を生み出している。
医師機能をアウトソーシングする、
というイノベーション
医心館の施設数が20に達する頃、アンビスホールディングスは上場し、2020年9月期に91億円だった売上高が2021年9月期に153億円に達するなど順調に成長を続けている。
「イノベーションを起こすのに突飛で天才的なアイデアは必要ありません。きっかけは、日常のちょっとした気づきで十分なのです。既存の仕組みを少し工夫するだけで、今までになかった業態が生まれます」と語る柴原氏。
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