多様な立地、事業主体で成功事例 CCRC2.0の普及のための視点
政府が掲げる「CCRC2.0」全国100か所設置目標の実現に向け、各地で多様な取り組みが始動している。高齢者の地方移住という従来の枠を超え、多世代共助のコミュニティづくりが各地で芽吹く中、宇和島市の「もみの木」や桜美林ガーデンヒルズなど、先進事例から見える成功の要因とは何か。
高齢社会と人口減少に直面する日本。その状況においても、人々の豊かな暮らしを実現する方策が模索されている。
2025年6月に閣議決定された「骨太の方針2025」と「地方創生2.0」に「CCRC2.0の展開」が明記され、3年後に全国で100か所の設置目標が示された。前回は誤解や先入観の多いCCRCについて、そもそもCCRCとは何か、高齢者の地方移住とみなされた初期のCCRC1.0とは何か、そして今回のCCRC2.0を「地元住民基点の多世代コミュニティ」として示した。
本稿では全国で動き出した多様な立地・多様な事業主体によるCCRC2.0の萌芽を紹介する。いずれも私が長く伴走している自治体や事業主体の取組みであり、市民・地域・産業の「三方よし」のモデルは、CCRCの実装と拡大のヒントになるはずだ。1
もみの木
(愛媛県宇和島市・自治体主導型・地方型)
宇和島市は2016年からCCRCに取り組んでおり、「もみの木」は廃幼稚園を再生し、高齢者の介護予防と子どもの放課後教室を兼ねた多世代の地域交流拠点である。その特徴は、サ高住設置の「住まうありき」ではなく、多世代交流重視の「集うありき」である。さらに青年海外協力隊を関係人口・担い手として活用している。同市は小規模の地域交流拠点を次々と開設し、高齢化率の上昇に比べて介護認定率が低下するという効果を見せている。なお市役所の主担当者は、市長の慧眼により異動せずに約10年業務を推進しているが、担当者の継続性は非常に重要である。

出所:宇和島市高齢者福祉課
桜美林ガーデンヒルズ
(東京都町田市・大学連携型・近郊型)
桜美林大学の事業会社が運営を担う高齢者・大学生・子育て世代が居住する多世代コミュニティだ。大学の福祉・芸術の授業がここで実施され、学生と高齢者が一緒に学び、老年学の研究も行われる。さらに施設内の介護予防運動には周辺住民も参加可能であり、桜美林大学の多世代教育、老年研究、ブランディング、地域貢献に寄与している。
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