地域経営の新機軸 「職員研修」(を進める際)の注意点
近年は人的資本経営に力を入れている企業が増えているが、自治体も将来にわたって持続的に発展していくためには、人材育成が非常に重要になる。自治体における理想的な職員研修とはどのようなものであり、また、どのような点に注意して研修を実施していくべきなのだろうか。
劉備玄徳(三国志)は「大事を済すには必ず人を以て本となす」を発したと言われている。この意味は「大きな仕事を成し遂げるには、何よりも人が大切である」と解される。国家や組織の根本は「人」である。自治体は多くの事業を実施している。その事業は「人」(職員)によって進められている。その意味で、人材(職員)を育てることが最も大切になる。
自治体が持続的に発展していくためには、人材としての「職員」の育成が重要である(その前に優秀な職員を採用することも大事である)。しかし、自治体は財政が悪化すると、すぐに職員研修を縮小する傾向が強い(場合により廃止してしまう)。
私見になるが、首長や地方議員は、研修に関心をあまり持っていないように思う。政治家の任期が4年間であるため、どうしても短期間で成果の出る施策を選択するようになる。しかしながら、研修(人材育成)は短期間では成果はでない(短期間でスーパー職員が登場することは「突然変異」以外にはない)。その結果、研修は蔑ろにされ、光が当たることが少ない。今回は職員研修について考えたい
研修の法的根拠
最初に職員研修の法的根拠を確認する。それは地方公務員法にある。地公法第39条の見出しは「研修」とあり、条文は「職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない」とある。同条文を根拠として、自治体は研修を実施している(はずである)。
地方自治法第2条14項には「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とある。同条文を拡大解釈すると、費用対効果(最少の経費で最大の効果)を意識し、住民サービスを適切に提供するためには、職員の能力向上が求められる。そのためには研修を充実させていかなくてはいけないだろう。
また、自治体基本条例(「自治体の憲法」と称される)には「市長は、職員が市民のためにその能力を最大限に発揮して職務に取り組むことができるよう、職員に研修や実践の機会を与えるように努めます」という趣旨で、研修の機会を確保しているケースもある。これも法的根拠である。
さらに、自治基本条例には「職員は、社会状況の変化、市民ニーズ等を的確にとらえる」とか「職員は、市民の求めに対して、適切に説明する」「職員は、政策等を立案し、及び遂行する能力の向上に努める」などの条文が明記されていることが多い。ここで明記した職員になるためには、職員一人一人の能力開発が求められる。そのためには研修をしっかりと実施なくてはいけない。
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