愛媛県鬼北町×ドコモ×伊予銀行×IRC 3本柱で進める鬼北町のDX

NTTドコモ、伊予銀行、いよぎん地域経済研究センター(IRC)は、鬼北町と連携して過疎地域型スマートシティの実現をめざしている。鬼北町が掲げる3本柱の取組みに対して、それぞれの立場から現状と今後の支援について聞いた。

左から、ドコモCS四国 愛媛支店 DX推進アドバイザーの中川氏、伊予銀行 地域創生部課長の兒玉氏、いよぎん地域経済研究センター(IRC) コンサルティング部 地域戦略グループの岡本氏

――3本柱のテーマはいずれもDXがキーワードです。鬼北町のDXの現状と課題についてお教えください。

中川 鬼北町に限らず全国でも言われているのが、DXの計画を立案したあと、実際に計画を推進する力や人材が不足していることです。今回の連携協定後、ドコモとして最初にご支援する内容は鬼北町版デジタル総合戦略の戦略策定ですが、先行で策定された「愛媛県デジタル総合戦略」を参考にすると、サービスデザイン思考(住民視点でメリットを最大化する考え方)やEBPM(デジタル化されたデータ活用に基づく政策立案)などが重要なポイントとなります。世の中にあるさまざまなサービスやソリューションの何をどう活用していくか、またそれを運用する人材の育成をどう進めていくかが今後の課題と考えています。

兒玉 伊予銀行では、地域の住民や事業者に寄り添いながら、町と連携して地域課題の解決に取り組んでいます。最近では、農業分野において、各種補助金を活用して、スマート農業に取り組む事業者も増えてきています。当行もDX企業の紹介や補助金申請のお手伝い等を通じて、スマート農業への取り組みを加速化させる必要があると考えています。

岡本 IRCは地域のシンクタンクとしてプロジェクトの助言や中心街である近永駅周辺の賑わい創出に取組んでいます。人口の4割以上が居住する近永地区は、地理的には高知県の県境に近く、移動の拠点といえます。そうした地の利もあり、今年度から近永駅付近にコワーキングスペースがOPENし、場所を選ばず働く事業者や地域の住民が集うことが可能になりました。

またこのエリアにある愛媛県立北宇和高校の屋上に地域限定の「ローカル5G」を整備予定で、高校付近にある公営塾ではDXや起業などについて「鮮度の高い学び」を全国の講師からオンラインで聞くことが可能になり、他の地域との差別化になると考えます。

――鬼北町は高齢化率が46%と高いですが、それに対する対応はどんなことが考えられるでしょうか。

中川 2021年12月、保健師とコロナ感染疑いの患者との一次相談窓口として、オンライン相談窓口を試験導入しました。電話では得られない患者の身体所見を踏まえ、保健師がより多くの情報をもとに対処方法を検討し、医師に伝達することができるほか、患者にとっての安心感にもつながります。また今後はドコモの「健康マイレージ」を活用しながら、AIによるフレイル※予防や見守りネットワークをつくれないかと考えています。「健康マイレージ」は歩数計やスマートフォンなどで計った歩数データをポイント化して、ふだんの健康づくりに向けた意識を高めるサービスです。スマートフォンでご利用いただくと、そこで溜まったデータと地域情報をAIで処理することで、これまで困難であったフレイル検知が可能となります。またスマートウォッチと連携することで、転倒や不安定な心拍を検知した場合に緊急通報や家族への連絡が実施でき、高齢者の見守りも効果的に行うことが可能です。一方でこうしたサービスを使っていただくための「デジタル・デバイド」の解消も重要で、高齢者向けのスマートフォン教室や店舗対応など積極的に利用促進を行っていきます。

図 NTTドコモの健康マイレージ

健康マイレージで取得した歩数と地域情報を掛け合わせ、フレイル検知などに活用する計画だ

出典:NTTドコモ

――地域では「ヒト・モノ・カネ・情報」が不足しがちと言われます。4者の連携でどう解決につなげますか。

兒玉 今回の連携では4者が所有している人材、ノウハウ、ネットワークを活用して、主にヒト・情報の観点から支援して、より効果的なDX推進につなげます。カネ(財源)については、伊予銀行の県外企業とのネットワークを活かして、企業版ふるさと納税を活用した予算確保ができないかと考えています。また、地域資源としては豊かな自然を生かしたアウトドアツアーとして、キャニオニングやラフティング、サイクリングなどがありますが、デジタルやドローンを活用することでより付加価値の高い観光コンテンツ造成に貢献できると思っています。

中川 ドコモとしては地域社会の課題解決を目的としたDX支援を事業として進めていることもあり、地方自治体と積極的に連携して参りたいと思っておりました。今回は自治体だけでなく、地域を熟知した地方銀行と地域のシンクタンクとの協業ですので、より地域の声に寄り添いながら進めることができると期待しております。

岡本 プロジェクトをマネジメントする立場として、DXに必要なハード面とソフト面を総合的に運用できるドコモが参画することは、システムの安定稼働や稼働後の改善において非常に重要です。また、地域の課題といっても交通や観光、農業など分野が多岐にわたりますが、こうした分野についてノウハウと全国での事例があることは、今後関連するプロジェクトを立ち上げる際に参考になるはずです。それぞれが保有する知的・人的資源を活用し、地域活力に満ちた鬼北町の実現に寄与できればと思います。

 

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