新しい予防医療の創出へ 健康管理に新たな文化を作り出す

2030年へ向けた長期ビジョン「Going for ZERO―予防医療で世界を健康に」を掲げる、オムロンヘルスケア。慢性疾患患者の増加やグローバルに拡大する医師不足、コロナ禍による健康意識の高まりや医療のデジタル化の加速で、大きく変わりつつあるヘルスケア領域において、新たな予防医療の創出を目指す。

岡田 歩 オムロンヘルスケア 代表取締役社長

日本の社会に
家庭で血圧を測る習慣をつくる

2023年7月、オムロンからの分社20周年を迎えたオムロンヘルスケア。「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」というミッションのもと、直近は、2030年へむけた10年戦略をスタート。「Going for ZERO―予防医療で世界を健康に」をビジョンに、循環器事業、呼吸器事業、ペインマネジメント事業の3つの領域にフォーカスする。

循環器事業では脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)、呼吸器事業では呼吸器疾患増悪ゼロ、ペインマネジメント事業では慢性痛による日常の活動制限ゼロの3つの「ゼロ」実現へ向け、取り組みを進める。

健康医療機器とサービスを提供してきたオムロンのヘルスケア部門が同社の前身。家庭血圧計の第一号機を発売した1973年からは、50年が経過する。「血圧は病院で測るもの」が常識だった当時、家庭向け血圧計は全く売れなかったという。

「毎日一拍ごとに変動する血圧は、病院の診察時に測るだけでなく家庭で日々の血圧をチェックすることがよりよい高血圧治療に役立つという認識を医師や医学界と連携し浸透させてきました。世界中で行われている臨床試験に我々の製品を使用してもらうことで機器への信頼を獲得し、20年30年かけて市場をつくり上げてきました」と、同社社長の岡田歩氏は話す。

家庭で血圧を測ることが診療に役立つことが認識され、高血圧治療のスタンダードになったのは2014年のこと。日本高血圧学会が定めた高血圧治療ガイドラインで、家庭で測定する「家庭血圧」が、診察室内で測定した血圧の値よりも、診断の際に重要視されるようになった。同社の血圧計は、現在までにグローバルで130カ国以上、累計3億5000万台の販売を達成している。

「血圧計は医療機器です。精度・品質の良い製品を作り、医学的な裏付けや医師の信頼を獲得してきたこと。100カ国以上で医療機器の認可を取得し、グローバルに製品やサービスを展開できること、そしてワンブランドで世界中に製品を提供できることは、我々の強みです」。

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