「アイデア資本主義」 意志とアイデアで勝負する時代の到来

――空間や時間、モノの生産や消費というフロンティアが消滅しつつあり、次に資本が向かう対象は「アイデア」であると指摘されています。

資本主義は本質的に拡大を志向します。歴史を振り返ると従来のフロンティアは飽和しつつあり、社会が物質的に満たされている中で人々が何を必要としていて、何を作れば売れるのかがわかりづらくなってきています。そんな中でもヒット商品は生まれていますが、資本が潤沢だったからというより、むしろアイデアがよかったからという例が増えてきました。拡大の方向性が人々の頭の中、つまりアイデアに向かっている、資本力よりアイデアの時代が訪れているというのが本書のテーマです。

「お金をかけているのに、なぜイノベーションが起こせないのか」と言われることもありますが、今は商品のスペックを高めてもヒットに繋がらない時代なので、予算があったところで「よいアイデア」がなければ活路は開けません。また、「よいアイデア」が勝つ時代ではありますが、アイデアがあるだけでは駄目で、それが見出されるようにする必要もあります。

――アイデアで資本を惹きつけるには、アイデアが理解される伝え方も大切ということですね。

まだ実現していないからこそアイデアなわけで、実現した姿との間には飛躍があります。ポテンシャルを説明することはもちろん重要ですが、周囲に到達点のイメージが伝わらないのであれば、アイデアのよさはもちろん、発案者自身が熱意をもってそれを実現していくという意志と実力を示すことも重要です。

――SDGsが注目され、脱資本主義などとも言われています。

資本主義をミクロに見てみると、私たち一人ひとりが将来の利益や安心のために今の出費を我慢して貯金・投資する、というありふれた行動に帰着します。これらの集合が結果としてマクロな資本主義を成しているのであり、人々の考えや生活にしみ込んだミクロな意味での資本主義をなくすのは難しい。ならば、今の社会が抱える問題は、資本主義をアップデートすることで解決していこうというのが私の考えです。

アイデア資本主義とは、アイデアがあれば資本は後からついてくるという意味で、予算や資本力がなくても勝負できる時代になったといえます。私自身の経験からも、それらに思い悩む前にアイデアを出し、ミクロとマクロを行き来してそれを磨き、意志をもって全力で実行していくことが大切だと感じています。

 

大川内 直子(おおかわち・なおこ)
アイデアファンド 代表取締役、文化人類学者

 

『アイデア資本主義 文化人類学者
が読み解く資本主義のフロンティア』

  1. 大川内 直子 著
  2. 定価 本体1800円+税
  3. 実業之日本社
  4. 2021年9月刊

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