持続可能性を考える「起点」としての観光 海士町ジオパークの高級ホテルEntô
日本でも数少ない成長産業である観光だが、持続可能性の観点からは、移動や宿泊などの環境負荷をどれだけ低減できるかが注目される。これら守りの要素に加え、自然と人との新しいつながりを育てようとする取り組みを紹介する。
観光には、人びとを自然や地域社会とつなぎ直すという、持続可能な社会へのシフトに必要な積極的な役割を担う力がある。島根県隠岐郡海士町に2021年7月に開業したホテルEntô(エントウ)からその可能性を紐解こう。
「ないものはない」島に
生まれた新しいホテルEntô
島根県隠岐郡海士町は、日本海の隠岐諸島にある人口2200人ほどの町だ。本土からはフェリーで3~4時間かかる。歴史的には後鳥羽上皇が配流されたことで知られる。地域活性化では、積極的な移住者の受け入れや、高校魅力化プロジェクトなどが評価され、数多くの表彰をこれまでに受けている。
海士町の価値観を表す言葉として「ないものはない」がある。「大事なことはすべてここにある」という意味と、「なくてもよい」という意味を併せ持つ。その言葉の通り、島の資源を丁寧に拾い上げ、不必要な設備は作らず、官民挙げて地道に地域循環を育てる取り組みを続けている。
この海士町に、2021年7月に洗練された高級ホテルEntôが誕生した。Entôは漢字では「遠島」と表され、「遥か彼方、遠く離れた島」そして「島流し」を意味する。Entôは、単なる宿泊施設ではなく、ジオパークに関する展示や隠岐諸島に広がるフィールドのコンシェルジェ機能も包含した、日本初の本格的なジオ・ホテルである。島で唯一のホテルの本館老朽化に伴う立て直しのタイミングと、隠岐諸島のユネスコ世界ジオパーク拠点整備のタイミングが重なったことで生まれた。
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