自治体DXに求められるデジタル技術との向き合い方 コンカーが目指す自治体DXと未来

DX推進の流れは民間企業に限らず、自治体にも求められている。デジタル技術を活用した自治体DXツールを開発・提供するコンカーの長谷大吾氏と、日本初の自治体CDOとしてデジタル変革の取り組みを最先端で進める磐梯町副町長/磐梯町役場 CDOの菅原直敏氏にDX実現のポイントを聞く。

デジタル技術は「MVV」を
実現する手段の1つ

――菅原さんは「自治体CDO(デジタル最高責任者)」として、磐梯町のデジタル変革をどのように進められていますか?

菅原直敏(以下、菅原) 磐梯町のデジタル変革の取り組みは、根底にあるミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を実現するための手段の1つとしてデジタル技術がある、という考えがベースにあります。たとえばビジョンは「子や孫たちが暮らし続けたい魅力あるまちづくり」であり、これだと漠然としているので6つに要素分解して、その1つは「働き方の再デザイン」です。これを実現しようとすると、リモートワークの標準化が必要で、そのためにデジタル環境を構築…というイメージですね。この考え方で全ての意思決定をしています。

磐梯町「旅する」副町長兼最高デジタル責任者 菅原直敏氏

――MVVは磐梯町の職員の方と一緒に考えられたものですか?

菅原 そこはフェーズがあります。2019年にデジタル変革戦略室を立ち上げて、MVVなどをまとめた「磐梯町デジタル変革戦略」を作成するにあたっては、第1版は私が考えて、現在の第2版からは現場の職員に考えてもらいました。そのために職員研修を行い、デジタル技術には一切触れずに、徹底してMVVの議論を実施しました。そうしないとサイロ化してしまい、部分最適な取り組みだけが生まれることを危惧したのです。

――世の中ではデジタル変革においてバックオフィスの効率化が大きなポイントとして語られることが少なくありません。

菅原 そうですね。ただ、私は民間企業も経営しているなかで、自治体と民間企業のバックオフィスや管理部門に対する大きな違いを感じています。民間企業であればトップの判断で変えられますが、自治体は国のさまざまなシステムが重なっているため簡単に変えられないところがあります。それではエンドトゥエンド(E2E)のシームレスなシステムはできません。磐梯町では現時点で変えられないところはやらないと決めて、現場で変えられるところから進めている状況です。コンカーさんはいろいろな自治体とそのあたりのデジタル変革を進めていると思うので、ぜひ話を聞きたいです。

長谷大吾(以下、長谷) ありがとうございます。弊社は住民とは直接つながらない部分である、自治体内部の予算執行業務や旅費精算のDX化、デジタルを活用した効率化の支援に取り組んでいます。

株式会社コンカー ディストリビューション統括本部 公共営業本部 部長(公共分野担当) 長谷大吾氏

コンカーが目指す
「経費精算のない世界」

――コンカーの取り組みについて詳しく教えてください。

長谷 弊社が最終的に目指しているのは「経費精算のない世界」です。もちろんその業務はあるものの、全てデジタルで人の手を介さずに行う環境ですね。自治体での予算執行業務のポイントは入口をいかにデジタル化するかです。交通系ICカードやコーポレートカードなどでのキャッシュレスデータをコンカーは連携して取り込むことができます。多くの民間企業では現在、できていて、自治体でどこまで実現できるかはこれからチャレンジするところです。

菅原 とても共感します。磐梯町も予算執行の手間を何とかしたいと思いながら、なかなかオールインワンの最適なツールがなかったんです。自治体での導入は進みそうですか?

長谷 導入いただける自治体が昨年度から出てきていて、今年下半期には国内データセンターが設置されるので、来年度から本格的に自治体への導入がスタートします。導入促進のポイントは2つあると思っています。1つはキャッシュレス決済への対応で、自治体はコーポレートカードを使えないところがあるため、そこが1つの障壁になっています。

菅原 磐梯町は自治体で初だと思いますが私がコーポレートカードを導入させました。紙で処理すると無駄が多すぎますよね。

長谷 もう1つのポイントは、人ではなくデジタルに働かせるオペレーションをどう実現するかです。それは業務をいかにシンプルにできるかで、シンプルになればなるほどデジタルで処理がしやすくなります。ただ、今は現行の公務員等の旅費制度や、自治体の旅費規則や規定などが障壁になって業務がシンプルにできないところがあるので、そこも追求しているところです。

菅原 デジタルに働かせるオペレーションにすることで利用データが残るので不正もできなくなるというメリットもあります。人が承認するからワークフローが無駄に増えて、不正が行われる隙ができるんですよ。

図 (旅費業務)コンカーで実現する業務プロセスイメージ

出典:株式会社コンカー

 

DX推進のためのポイントは
技術よりも「マインドセット」

――デジタル変革を行ううえでの課題はどのようなものがありますか?

菅原 行政もDXを一生懸命にやってますが、あらゆる問題はデジタルの問題ではありません。技術的にはほぼ全てが対応可能な状態なので、問題は組織の「意思決定の問題」、運用する人たちの「マインドセットの問題」です。

長谷 同感です。コンカーの導入にあたり自治体職員の方々と話をする際もシステムを触っていただくよりもマインドセットのところで、業務をどう変えるか、シンプルにするかというディスカッションに多くの時間を割いています。そうすると自治体職員の方も盛り上がって意見を出してくれて、マインドセットが変わっていくのを実感しました。

――マインドセットを変えることがDXの決め手になるのですね。最後に、今後の「構想」をお願いします。

菅原 4月から磐梯町の副町長になりました。大きな自治体は別として、磐梯町でできない取り組みは他の自治体でもできないと思っているぐらいの決断をしている自負があります。それができるのは冒頭に話したMVVがあるからです。この3年間で現場がデジタルを当たり前の手段として意識せずに使えるようになったので、今後も部分最適にならないようにコーディネートしていくのが副町長の私の役目です。

長谷 自治体DXに関しては、現在、国会公務員等の旅費制度が改正される見込みが立っているので、今が変革できる一番のチャンスです。コンカーはこれからも自治体のみなさんと一緒にチャレンジをしていきたいと思います。

 

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