「いい会社」への投資がつくる持続可能な経済 金融の新たな潮流

鎌倉に本社を構える鎌倉投信は、2008年創業の独立系投信委託会社。ESG投資が注目される以前から、事業の社会貢献性に着目した運用手法を採用していることで知られる。同社が投資先とする「いい会社」と目指す金融のあり方とは。代表取締役の鎌田氏の講義から紹介する。

鎌倉の地から発信する
サステナブル金融

事業性と社会性を両立する企業へ投資をする投資信託「結い2101」で知られる鎌倉投信。2101は西暦を意味し、次の世紀につながる価値を創造するとの想いが込められている。「社会性ある投資活動を第一義に起業したわけではありません」と創業者で代表取締役社長を務める鎌田恭幸氏は話すが、日米で20年超、ファンドマネジャーのキャリアを積むなかで、金融市場が実体経済と乖離していくさまに居心地の悪さを感じていたという。

鎌田 恭幸(かまた・やすゆき) 鎌倉投信 代表取締役

こうしたなか、同じ想いを持つ創業メンバーらと議論を重ね、お金を持続的な社会の発展のために活かすというビジョンにたどり着く。短期的な利益を追求せず、投資先と持続的な関係を築く投資信託を2010年に立ち上げた。 同社の本社屋は、国内初の環境保護活動が生まれるなど古いものを守りつつ新たな価値を創造する鎌倉の、築100年近い古民家。これも自社の投資哲学を投資家に発信するためだ。

企業と投資家をつなぐ「場」を設計

同社は顧客である投資家の資産を増やす経済性と社会性の両立をミッションとする。社会性とはお金を社会の持続的発展につなげることだが、実現には投資家がその意義を実感し投資先企業と信頼感で結ばれることが不可欠。重視したのが場づくりだ。3つの「わ(和・話・輪)」を会社の志とし、金融が投資家の経済的な豊かさと、この「わ」を育む場でありたいとの経営理念を掲げる。

この「場づくり」に向け構築したビジネスモデルが、公募型投資信託の直販を通じて「いい会社」を応援し、投資家の資産形成と社会の持続的発展の両立を目指す、だ。公募型投資信託は、国内に現住所を持つ人であれば誰でも購入可能。また、一般的に少額から投資でき満期もないため、投資家は長期的な信頼関係のもと可能な範囲で投資先を応援できる。さらに証券会社などを通さず直販することで、運用会社の顔が見える関係とした。

これに加え、投資先企業と投資家が直接対話できる「いい会社訪問」や「受益者総会」など独自性ある場も設定した。鎌田氏はこうした仕組みを通し、例えば直接対話の場で、経営者の強い想いや諦めない姿勢に触発され、投資家が自らの生き方を変えるような、「心に灯がともる瞬間」を数多く目にしてきた。

「お金は自身の価値観を含め、さまざまなものと出会う契機となります。投資は人の心を変えるものでもあると実感しています」

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