エネオスVS出光興産 脱化石燃料へビジネスモデルの転換を急ぐ

脱炭素社会へ向けて、石油卸売業界は今、大きな転換点を迎えている。化石燃料に代わって、水素、再生可能エネルギー中心のサプライチェーン構築へと動き出した、エネルギー産業トップ2社の動向を見る。

転換期に立つ、石油元売りトップ2

脱炭素社会の実現に向けて世界と産業界が大きく舵を切る中、化石燃料に依存してきた石油元売り企業は、根底からの事業見直しを迫られている。各社は、2040年頃の大幅な石油需要減少を想定していたが、脱炭素化への流れは想定を超えて加速している。

業界トップのENEOSホールディングスは、2040年に自社排出分のカーボンニュートラル達成を掲げる。今年5月にはカナダやオーストラリアでの石炭開発の権益を売却する方針を表明し、再生可能エネルギーや水素関連などに投資を集中させている。水素については、現在46カ所の水素ステーションを運営し、石油精製事業で蓄積した水素の輸送ノウハウを活かしながら、海外からの安価なCO2フリー水素の調達・供給拠点整備を急ぎ、2030年度までに水素ステーション事業の黒字化を目指す。現在全国に1万3000カ所を展開する系列給油所、あるいは製油所もCO2フリー水素供給のハブとしていく計画で、CO2フリー電気についても、静岡県の清水製油所跡地で国内初となるサービスステーションでのVPP(仮想発電所)事業の実証を進めている。

業界2位の出光興産は、2050年に自社排出分のカーボンニュートラル達成を掲げ、再生可能エネルギー電力の販売量も着実に伸ばしてきた。現在全国に6300カ所を展開するサービスステーションについては、飲食や健康など、ガソリン販売に依存しないビジネス展開を目指している。2020年には横浜市でEV急速充電やカフェを中心とする実験店舗を開設するなどの模索が続く。一方、2021年4月には、タジマモーターとの合弁会社を設立して超小型EVの開発に乗り出し、カーボンリサイクルに基づくSAF(持続可能なジェット燃料)の製造・供給ビジネスモデルの構築、混合プラスチックのリサイクル事業も開始するなど、新事業分野の開拓にはきわめて積極的だ。

石油元売り各社にとって石油需要の縮小は、とりもなおさず次世代エネルギーを中軸に据え、その進化を担うための新たなビジネスチャンスとなる。これまでの膨大な事業リソースを活かしつつ新しいエネルギー企業の未来像を描き出そうとしている、トップ2社の今後の展開に注目したい。

両社概要

ENEOSホールディングス

設立 2010年(1888年 日本石油創立)
本社 東京都千代田区
代表 大田 勝幸(代表取締役社長)
資本金 1, 000億円
従業員数 40, 753名(2021年3月)
主な事業内容とグループ会社 ●エネルギー事業:
 - 石油精製・製品加工・販売、石油化学等製品製造・販売(ENEOS、東燃化学、鹿島石油 他)
 - 原油・石油製品の貯蔵・輸送(ENEOS 喜入基地 他)
 - 石油製品等販売、LP ガス製品販売、発電・電力供給(ENEOSフロンティア、ENEOSグローブ、川崎天然ガス発電 他) など
●金属事業:
非鉄金属製品、機能材料・薄膜材料の製造・販売(JX金属、JX金属商事 他) など
● 石油・天然ガス事業:
石油・天然ガスの採鉱・開発・生産(JX石油開発、日本ベトナム石油 他)

出典:ホームページ、第11期有価証券報告書

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