住民と自治体、双方にメリットをもたらす自治体DX 粗大ごみ収集をスマートにする「KANAMETO ECO」

LINEヤフーコミュニケーションズとtranscosmos online communicationsは、粗大ごみの収集申込をLINEで自動受付・管理できる「KANAMETO ECO」を共同企画し、24年1月から全国の自治体向けに提供をスタートした。住民はLINEを通じて365日24時間収集申込が可能になり、自治体は収集受付をオンライン化することで業務効率化につながる。

粗大ごみ収集の課題解決へ

粗大ごみの一般的な収集方法は、自治体のごみ処理センターに電話かインターネットで収集日を予約し、コンビニなどであらかじめ入手したごみ処理券を粗大ごみに貼り、指定された場所に運ぶという流れだ。多くの自治体では電話のみで受け付けているのが現状で、住民にとっては限られた時間で電話をしなければならず、架電してもつながりにくいといった課題がある。一方、少子化を背景に全国で地方公務員が減少するなか、自治体側も収集申込の受付時間や対応件数が限られるという課題を抱えており、住民サービスの向上と自治体業務の効率化が求められている。

福岡市とLINEヤフーコミュニケーションズは「地域共働事業に関する包括連携協定」に基づき、18年からLINEで粗大ごみの収集申込を受け付ける「福岡市粗大ごみ受付LINE公式アカウント」の実証実験を開始し、19年5月から本格稼働している。福岡市では、LINEだけでなく電話とWEBでも収集申込を受け付けているが、24年1月時点で、収集申込全体に占めるLINEの申込割合は月平均約4割、土日祝などは5割以上となることもある。また、LINEで収集申込をした市民に対して行ったアンケート結果では、利用満足度が88%という数字が出ている。

図 福岡市粗大ごみ受付 LINE 公式アカウントにおける実績(24年1月時点)

出典:福岡市調べ(23年5月~12月実績)

 

福岡市で多くの市民に使われている「福岡市粗大ごみ受付LINE公式アカウント」をモデルとして、LINEヤフーコミュニケーションズとtranscosmos online communicationsは、LINEを活用し粗大ごみ収集受付から手数料決済までオンラインで完結できる行政向けサービス「KANAMETO ECO(カナメト エコ)」を共同企画し、24年1月より提供を開始した。

「KANAMETO ECO」は、200超の自治体で導入されているLINE公式アカウント運用ツール「KANAMETO」の新機能にあたり、KANAMETOを利用していない自治体も、KANAMETO ECO単体の導入が可能。「『福岡市粗大ごみ受付LINE公式アカウント』をモデルにしつつ、多くの自治体にヒアリングを行い、粗大ごみ収集の方法などが異なる全国の自治体でも導入できる汎用的なクラウドサービスとして提供しています。自治体は、ゼロから開発することなく初期投資を大きく抑えてスピーディーにLINEで粗大ごみ収集の申込受付を開始できます」とtranscosmos online communicationsのプロダクトマネジメント部部長、千葉拓麿氏は説明する。

「KANAMETO ECO」の操作画面。スマホ上で「収集日」や「品目」を選択していくことで、簡単に粗大ごみの収集申込が完了する

住民、自治体
双方にメリットをもたらすツール

「KANAMETO ECO」は住民利用者と自治体、双方にとって利便性の高いツールになっている。利用者は、自治体のLINE公式アカウントから24時間365日申込が可能だ。LINEから「粗大ごみ収集申込」へ進み、収集希望日を入れ、ごみの品目や点数を選択すると、自動的に処理手数料が計算される。支払はクレジットカード、PayPay、LINE Payなどのオンライン決済に対応しており、申込が完了するとLINE上に確認のメッセージが届く。さらに、申込後の変更やキャンセルの手続きもLINE上で実施でき、収集日が近づくとLINEにリマインドメッセージが届くため、ごみの出し忘れを防いでくれる。

自治体側は、住民がオンライン上で手続きを行うため電話対応の人員を割く必要がなくなり、工数削減につながる。また、独自で個別開発すれば膨大なコストがかかるが、各自治体のLINE公式アカウントにプラグインで簡単に接続できる点も強みだ。

開発の過程では自治体へのヒアリングをもとに、福岡市のモデルにはない新たな機能も加えられている。「例えば、粗大ごみの収集方法は自治体によって異なるため、各フォームの文言については自由に変えられるなど柔軟に設計できるようにしたほか、オンライン決済を終えた後でも変更やキャンセルができる機能も新たに加えました。必要に応じて収集業者も粗大ごみの収集日時、内容を閲覧することが可能なため、効率的な収集に役立ててもらうこともできます」と千葉氏。

宮城県登米市や沖縄県名護市など
導入が既に決定

「KANAMETO ECO」は1月のリリース以来、既に複数の自治体での導入が決まっている。3月1日から「KANAMETO ECO」を利用する宮城県登米市では、導入準備を始めて約1か月半で、市民向けに公開することができた。同市では、従来、粗大ごみ収集の申込を電話のみで受け付けていたが、新たに収集申込受付をオンライン化することによって、24時間いつでもどこでもLINEから申し込めるようになるため、利便性向上への期待を寄せる。

今後「KANAMETO ECO」の導入が決まっている沖縄県名護市は、24年3月現在、粗大ごみの収集申込はすべて電話で受け付けているが、電話が混み合い、つながらないケースが多かった。LINEヤフーコミュニケーションズ Pressによれば、渡具知武豊市長自身も「年末に粗大ごみ受付の係に電話してもつながらず、困った経験があります。こんな不便さを住民のみなさんが感じているのであれば、“何とかしないと”と思いました。LINEなら24時間いつでも住民が都合のいい時間にオンラインで申し込めるとわかり、導入を決めました」と経緯を明かす。また、自治体視点のメリットについても「粗大ごみ受付の電話対応に必要な時間は1件あたり短くても5分。より丁寧な対応が必要なときは、10分以上かかる場合もあります。LINEでの受付は、職員の業務改善にも大きな利点があると考えました」と渡具知市長。

今後も自治体への導入増加が見込まれるなかで、KANAMETO ECO開発担当の千葉氏は「いろいろな自治体様とお話をさせていただき、確実に需要がある機能はまだまだあると考えています。今後もクラウドサービスならではの強みを生かして機能のアップデートをどんどん行っていきたい」と話し、さらに利便性の高いサービスへとブラッシュアップしていく考えを示している。

 

お問い合わせ

transcosmos online
communications株式会社

URL:https://kanameto.me/eco/
Email:sales@kanameto.me
TEL: 03-5904-9091

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