絶望的条件の空き家を人が集う場に 地域の潜在力を呼び覚ます

再建築不可や下水道が通らない等の理由から、資産価値がゼロに近い「絶望的条件」の家。石巻市にあるそのような空き家を改修して、賃貸物件として移住者を中心に貸し出しているのが巻組だ。東京から移住して同社を起業した渡邊代表に、事業の狙いと将来構想について話を聞いた。

渡邊 享子(合同会社巻組 代表社員)

たくましい復興力に刺激され
石巻へ移住し、起業

東京工業大学大学院の修士2年の時、就職活動が難航し、進むべき道を探しあぐねていた渡邊氏。「自分の強みが活かせる仕事は何か」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、復興ボランティアとして訪ねたのが、震災直後の石巻だった。そこで明るくたくましく生きる人々の姿に、価値観を揺るがされたという。

「大勢の方が亡くなり、まちは瓦礫だらけ。なのに、復興に向けて自分でできることを探して取り組んでいる方が多くて、力強さを感じました。こんな前向きな気持ちの中で、自分の将来を考えてみたいと、毎週のように東京から夜行バスで石巻に向かいました」

少しずつ地元の経営者や商店主らと親しくなるにつれ、片付けや泥かき、イベント運営に関わるようになり、料亭の宴会場や店の一角、仲間の家に泊めてもらう夜が増えた。2012年には、東京の家を解約して石巻に移住。

「当時は、私のように石巻に継続的に暮らしたいと考える人がいても、地元の人が住む場所もないほど賃貸物件が不足していました。一方で、再建築不可や下水道が通らない等の理由から資産価値がゼロに近い"絶望的条件"の空き家が放置されていました。そこで、その物件を改修して住めるようにすればいいのでは、と思いつきました」

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