2020年12月号

新規事業開発のための広報視点

データ分析で コロナ禍と共生する自治体コミュニケーションを再考

牧瀬 稔(社会情報大学院大学 特任教授)

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日常生活に不確実性が強まっている。一方でコロナ禍と共生する道も模索しつつある。そのような中で、地方自治体の役割は高まりつつある。本稿は公共コミュニケーションの中でも「自治体コミュニケーション」に着目し、現時点における課題と展望を検討する。

自治体コミュニケーションとは

まず「公共コミュニケーション」の定義についてだが、公共コミュニケーション学会は「行政・議会・大学・NPO・医療福祉・ソーシャルビジネスにおける広報やステークホルダーとのコミュニケーション」としている。しかしながら、公共コミュニケーションについての決まった定義はまだなく、現時点においては参考文献も多く存在しない(そのため同学会において理論化が進んでいると考えられる)。

次に、自治体のコミュニケーションに限定して考えてみたい。自治体は住民に対して広報と広聴を実施している。広報とは「自治体の事業内容や活動状況を一般の者に広く知らせ、理解を求めること」と定義できる。広聴とは「自治体が一般の者から広く意見を聞くこと」である。もちろん、広聴は一般の者から意見を聞くだけではなく、既存の政策に反映させ、あるいは新しい政策づくりにつなげていくことが求められる。

また、広報と広聴の定義にある「一般の者」とは自然人(住民)だけに限らず、法人や法人格のない任意団体等も含まれる。ちなみに公報と公聴も類似した概念である。

自治体は広報と広聴の両輪をもって、住民や事業者等の一般の者とのコミュニケーションが成立する。このような状態を筆者は「自治体コミュニケーション」と称している。

一般的に「コミュニケーション」とは「伝達、通信、意思疎通などの意味の表現」と定義されている。ポイントは「意思疎通」である。言葉を使った意思疎通だけでなく、文字を使った伝達、身振り手振りによる意思表示などもコミュニケーションに該当する。

つまり「自治体コミュニケーション」とは「地方自治体と利害関係者との政策等に関するコミュニケーション(広報・広聴)活動」と定義できる。自治体コミュニケーションを成功させるためには、①広報により積極的に情報発信し一般の者との共有する機会を設け、②広聴により一般の者から多様な意見や要望等を得ることが大事である。

コロナ禍の課題は広聴

筆者はすべての地方自治体の実情を把握したわけではないが、コロナ禍における自治体コミュニケーションはうまく進んでいないように感じる。その理由は、現時点においては、やや広報に偏っているからである。

特に新型コロナウイルス感染症に限定すると、ほとんどが広報であり、広聴は圧倒的に少ない。しかも自治体が実施している広報は、一般の者のニーズやウォンツを捉えていない一方通行的な情報の伝達が多い。自治体は新型コロナウイルス感染症に関して、住民等とのコミュニケーションをとっている状況にはない。

もちろん自治体にも言い分はあるだろう。刻一刻と変化する新型コロナウイルス感染症の情報に振り回されている傾向がある。また、自治体のキャパシティを超える事務量の発生により、時間をかけて広聴に取り組めないという現状もあるだろう。さらに三密回避が広聴を疎遠にさせている実態もある。

しかしながら、自治体からの一方通行的な広報だけであると、結果的に住民や事業者等の一般の者の不信感を助長するだけである。コミュニケーションは関係者の意思疎通があって成立する。コロナ禍の自治体コミュニケーションは意思疎通があるのだろうか。コロナ禍だからこそ、広報に加え、丁寧に広聴を進めることを意識したい。

アクセス分析広聴の勧め

一般的に広聴は、①個別広聴、②集団広聴、③政策広聴、④調査広聴、⑤施設広聴の5類型あると言われている。それぞれ簡単に説明すると、①個別広聴は、住民等から個別に意見等を聴取する。②集団広聴は住民等を集めて意見等を聴取する。③政策広聴は、公聴会や監査請求等、政策に係わる広聴である。④調査広聴は、アンケート調査等を通して住民等の意見を聴取する。⑤施設広聴は、施設見学を通して住民等の意見を聴取する。

①から⑤の広聴を、現在のコロナ禍で実施すると、単に住民等に迷惑がかかるだけになるだろう。そもそも三密回避の時代においては、②や⑤、場合により③は実施できない。

そこで筆者が勧めているのは、地方自治体のホームページ等に来訪するアクセス状況を把握・分析するという広聴である。これは⑥アクセス分析広聴と言えるかもしれない。民間企業では当たり前に実施していると思われるが、自治体ではほとんど行われていないようだ。

やや話はそれるが、しばしば「政策づくりにはPDCAが重要だ」と言われる。しかし筆者はそうは思っていない。実は「Plan」(計画)の前が大事である。それは「データ分析」(Data Analysis)である。当たり前だが、データ分析をしてから「P」である。しかし、自治体の現場に行くと、「首長忖度P」や「議会押付P」が意外に多い。中には「身勝手経験P」も少なくない。これでは健全なPDCAにならない。さらに言うと、データ分析の前には「データ収集」(Data Collection)が求められる。

アクセス分析は有効である。ホームページにたどり着いたキーワードに加え、性別、年齢、関心、地域に加え、よく見られているページやどのサイトから訪れてきているかなどが分かる。これらを分析することにより、次の政策が見えてくる。アクセス分析は、ホームページ訪問者の思考や動向をつかめる広聴活動と言えるだろう。

筆者はコロナ禍においてはアクセス分析広聴が有効に機能すると考える。読者が自治体関係者であるならば、試してみてはどうだろうか。

 

 

牧瀬 稔(まきせ・みのる)
社会情報大学院大学 特任教授

 

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