2020年11月号
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ヘルスケアビジネスの新戦略

他業界のビジネスモデルは通用しない? 押さえるべきルールとは

加藤 浩晃(東京医科歯科大学 臨床准教授、アイリス 取締役副社長CSO)

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医学・行政・ビジネスの3つの観点から医療・ヘルスケア業界における新戦略を考察する本連載。今回は、医療・ヘルスケア領域の特性を法規制等のルールから考察する。医療・ヘルスケアビジネスを構想する際にこの点を疎かにすると、事業自体が成り立たない恐れもある。

参入に失敗しがちな
“新しいアイディア”

他領域から医療・ヘルスケア領域に参入しようとするとき、元々自分のいる領域で当たり前に使われているビジネスモデルを「そのまま」医療業界にもってこようとする取り組みを多く見かけます。「医療業界で〇〇ということが行われていない」「△△領域で行われている手法の××を医療業界にもってくれば効率化できる」など、他領域から医療業界に参入しようとする人・企業から筆者が相談される内容の多くがこのような話かもしれません。

結論からいうと、なぜ今までそのモデルが医療・ヘルスケア業界で使われていなかったかという明確な理由がわからないとき、その“新しいアイディア”は、医療・ヘルスケア領域のビジネスモデルとして「あやしい」と言わざるを得ません。正確に言うと、そのままでは医療・ヘルスケア領域では成立しないモデルである可能性が高いということです。背景には、医療業界でのビジネスに影響を与える法規制があります。今回は特に法律による規制と、その対応の仕方を紹介しましょう。

業界特有の法令・ルールを
知ることが第一

医療・ヘルスケア領域への参入を検討する際に必須なのが「医療に関係する法律をしっかり知る」ことです。医師法や医療法、医薬品医療機器等法(薬機法)など、医療・ヘルスケア領域にはさまざまな関係法令があります。また、製品の効果・効能を調査するなど、人に対して研究を行う際にも「臨床研究法」という法律が定められていたり、法律でなくても「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」といったルールなどがあったりします。そして、これらのルールはほとんどが事業に対して許可を与えるものではなく、違反があると行政から指摘を受け事業ができなくなるという類のものです。

表 医療・ヘルスケア業界参入時に知っておきたい主な法律・ルール

※本表に挙げた法令は特に重要なものの一部。法律の他に関連した通知や事務連絡の理解も必要となる

出典:編集部作成

 

“新しいビジネスアイディア”としてよく聞く話を共有しましょう。一般的に“送客ビジネス”と呼ばれるものですが、お客さんをお店に紹介して(送って)、お店から手数料をもらうというビジネスの形態があります。これを医療業界に応用したいという相談を年に何回も受けます。具体的には「糖尿病などの情報サイトを作り、そのページに関心のある人を集める。ページから内科クリニックを探せるようにして、ページ経由でクリニックに行った人数に応じて、クリニックからキックバックとして費用をもらう」というようなモデルです。

本当によく相談されるのですが、これは健康保険法の療養担当規則に違反しています。療養担当規則の第二条の四の二に「経済上の利益の提供による誘引の禁止」という項目があり、保険医療機関は値引きや利益の提供によって医療機関に誘引してはならないとされています。上記のように、紹介した人数に応じてキックバック(利益の提供)をしたり、診療の費用自体を安くしたりしてはいけないということです。

では、こういうモデルは絶対にできないのかというと、2つほど例外があります。1つは保険医療機関でなければよいということです。療養担当規則はあくまでも保険医療機関に対して定められている規則です。保険医療機関とは、簡単に言うと保険証を出して3割負担(高齢者であれば1割)になる医療機関のことです。では、そうでない医療機関とは、美容整形や人間ドックを行う自由診療クリニックなどです。保険診療を行わないこれらのクリニックは療養担当規則に該当しないため、美容整形のクリニックに患者さんを紹介して、一人当たり〇円としてキックバックを受けることが可能です。2つ目は、保険医療機関に対しても行われている方法で、ウェブ掲載料として費用をもらうというモデルです。ウェブページに情報を掲載し、そこからの送客人数に応じてキックバックするのは療養担当規則違反になりますが、ウェブページへの掲載料として費用をとるのは、医療機関から通常の広告料をとるのと同様であり、可能です。もう少し突っ込むと、送客想定数に応じて広告掲載の額を前もって変動させるプランを設定することも可能です。

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