OKI 「2階建て」組織で新事業開発、共創の風土を作る

沖電気工業(OKI)は国内で最初の電子通信機器メーカーとして、「進取の精神」で社会に寄与する商品の提供を目指してきた。2017年から進めるイノベーション改革やそのマネジメントシステムについて、川崎秀一取締役会長に話を聞いた。

企業風土改革を推進

――イノベーション改革は、どのようにして進めてこられましたか。

川崎 OKIは日本で最初の電子通信機器メーカーで、1881年に創業者の沖牙太郎が国産初の電話機を作ったのがその始まりです。米国でグラハム・ベルが初めて電話機を作った5年後のことで、まさに「進取の精神」によるものです。コミュニケーションツールの電話機が世の中に必要だと考え、社会貢献の発想から事業が始まったのです。

川崎 秀一(沖電気工業[OKI]取締役会長)

OKIではその後も、この精神が受け継がれています。その一方で、私たちはお客様に恵まれてきたことから、「社会で何が必要とされているのか」と自ら考え事業を始めるところが、昨今、やや弱くなっていたと反省もしています。このため、現在は企業風土改革に取り組んでいます。

要するに、プロダクトアウトではなくマーケットインで、世の中に必要なものを自ら見つけ、イノベーションを起こして提供することが大切ということです。マーケットインでは国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を目標に、社会課題の解決に向けて、OKIの技術を活かした提案をしていきます。

OKIの企業理念は、「『進取の精神』をもって情報社会の発展に寄与する商品を提供し、世界の人々の快適で豊かな生活の実現に貢献する」というものです。ですから、この原点に戻り、受け身型でなく積極型になるための企業風土改革を進めています。

複雑な社会課題の解決に向けては、現実を知ることが重要になりますから、お客様との「共創」をコンセプトにしています。現場で問題を見つけ、その解決に向けてこうしてはどうかという概念ができたら、現場での評価、効果測定、改善点の抽出などを行いつつ、それを進めます。これは概念実証(PoC)で、OKIでは現在、この活動が非常に多くなっています。机上の検討だけでなく、お客様と共に何度もやってみることで、次の商品開発のノウハウが生まれたり、今、提案しているものを改善したりできます。失敗を恐れず、これをたくさんやることが重要です。

取り組みの1つの例に、北海道における「水中音響活用による密漁対策IoTサービス」があります。北海道ではアワビやナマコの組織的な密猟で、大きな被害が出ています。密猟は夜間に行われ、特に雨天時は監視カメラでは発見しにくいことから、密漁を行うダイバーの呼吸音や不審船のスクリュー音を発見できる水中音響技術で、早期の警戒や通報を可能にしました。他にも様々な取り組みを行っており、それがイノベーションにつながっていくと思います。

社員のやりがいや働き方改革
にもつながるイノベーション

――社員が失敗を恐れ、思い切って取り組めないということにならないよう、どのような工夫をされていますか。

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