植物由来のバイオプラスチック 機能性を高めて海外も視野
竹や麦芽、コーヒー豆の殻など、有機物と樹脂を組み合わせた新素材「ユニペレ」。脱プラへ貢献するほか、低燃焼性・抗菌性など従来型樹脂にない機能性を高めた。北米やドイツの企業や研究機関とも連携しつつ、日本独自な環境配慮型素材の発信を目指す。
20年の実績が生む新素材
プラスチック部品の製造販売を手掛けるユニオン産業では、20年ほど前から生分解性プラスチックの開発に取り組んできた。代表取締役を務める森川氏は、カナダよりトウモロコシ原料の生分解性素材を取り寄せ、ゴルフティーなどを製作していたが、当時は新素材に対する日本の意識が薄く、市場の反響は振るわなかった。「日本の場合は焼却・低燃焼カロリーなど機能性を重視した技術開発が不可欠と認識しました」と振り返る。
「日本では江戸時代から竹が使われており、その抗菌性に着目し、樹脂に組み合わせてきました。他にも、日本人にとって受け入れやすい茶葉・笹・麦芽など植物由来の廃棄物を集め、循環型の素材として開発しました。自然界の素材を配合すると燃焼時に有毒ガスの発生が抑えられることが認知され、日本市場に普及し始めました」
とりわけ竹は、全国各地で竹害が起き、里山が崩れてしまう被害を及ぼしている。「竹は発育が早いので速やかに伐採し、粗粉砕・微粉砕・射出成形まで、全て内製化し一貫して社内生産しています。素材の用途に応じて配合する植物由来素材の粒度を変え、強度や触感に多様性を付けています。他にも、各地の地場産品を加えて素材を製造する試みを行っています。例えば福島県のヒノキ、新潟県の笹団子、2011年に被災した陸前高田市の海藻の廃棄部分であるワカメの茎、地ビール製造企業から出る麦芽など。宮崎県では養鶏場の卵を使って箸を作って欲しい、といったご依頼を頂いています」
とりわけ、抗菌性は高い注目を集める。福岡県にある、災害時にプールの貯水を飲料可能にする浄化機械のメーカーからは、家庭用貯水タンクの口に使う滅菌素材(フィルター)の製造を依頼された。「難しいご依頼でしたが、1年間の開発期間を経て実装に漕ぎ着け、化学系研究所に分析を依頼したところ、4日目で滅菌効果を現しました」
滅菌効果は薄く加工したプラスチック素材でも発揮される。例えば竹炭を配合した「パワーシート」はスーパーマーケット等で店頭販売される生肉のトレイ下に敷くことで、大腸菌O-157の繁殖を抑制する。「通常の容器だと、一滴落としたら24時間で菌が倍増しますが、当社の容器では-0.2と逆に菌が付かないというデータが出ています。神奈川県では、インフルエンザウィルスも80%以上抑制し、排水溝にも1カ月経ってもぬめりが付かないとの御声を頂いています」。エチレンガスを吸着するため、常温でタッパー内に敷いておくだけで、トマト、イチゴ、葉物・卵などのカビ抑制と鮮度維持につながり、「消費期限を過ぎた食の廃棄を抑制するうえで役立つ素材」だという。またフィルムは、介護センターで紙オムツの処理をする際に活用できる。
衛生的であるほか、耐熱性も高く、一般家庭の電子レンジでも充分に使える。「化学物質との接触を抑える観点では安心・安全な素材ですので、幼稚園・保育園のお弁当箱、介護センターの食器で利用していただいています」
メーカーにとっては、生分解性素材を採り入れることで、環境に配慮している、という企業イメージの向上につながり、CSRとしてのメリットも高い。「対象から色々とテーマが派生する」と語るが、そもそも、これほどに依頼が殺到するきっかけとは何か。
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