知識創造モデルと成功の本質 AI時代、人の「知」が成長の鍵に

平成の時代、多くの日本企業が失敗に陥った。その「失敗の本質」の分析が、2020年の今、求められている。一方で平成の時代に発展を遂げた、一部の日本企業も存在する。そこから学ぶべき「成功の本質」の1つが、組織的な知識創造活動を概念化したSECIモデルだ。

暗黙知の強さと弱さ

あらゆる知識は暗黙知として生まれる。人間の思い、夢。これらは最初から具体的かつ明確に存在するわけではなく、多分に暗黙性を伴う。暗黙知こそ創造性の原点であり、現段階では暗黙知はAIには生み出せない。デジタル時代、AIを駆使する時代にあっても、未来は人間の思い、夢から生まれる。そこに暗黙知の強みがある。

しかし、知識が暗黙知にとどまっていれば、その共有の範囲は限定的になるし、共有にも時間がかかる。知識を暗黙知のままにしておくと、客観的な分析も行われにくい。そうなると過去のある特定の「場」で真理であったことが、「場」が異なるにもかかわらず知識として理解されてしまうという過ちがおかされてしまう。つまり過去の経験(成功もあれば失敗もある)が永遠普遍の真理と誤解されてしまう。

優秀企業は衰退する、革新者は時代の大きな転換期に競争優位を失うといった議論1) は、このような過去の「場」における暗黙知を、客観的な分析なくして異なる「場」に適応してしまったことに起因しているのである2)。したがって、組織における知識創造において鍵を握るのは、暗黙知を形式知化し、個人の主観に始まる知識を組織的な知識に転換すると同時に、それを客観的に批判検証し、新たな知識創造活動に向かう点にある。

「平成、失敗の本質」

2020年、暗黙知を形式知化し、個人の主観に始まる知識を組織的な知識に転換すると同時に、それを客観的に批判検証し、新たな知識創造活動に向かうことは、ますます急務な課題なのではないだろうか。平成の時代は、残念ながら、日本経済全体を俯瞰すると、失敗の時代であった。昭和の時代に栄華を誇った日本企業の多くは、平成に入ると、とりわけバブル崩壊後は国際的な競争力を失い、失われた時代を過ごすことになった。倒産して存在しなくなった企業もあれば、合併や事業売却等を通じて大きくその姿を変えた企業も多かった。

日本企業の何が間違っていたのかを分析し、令和の時代に、日本経済に再び輝きを取り戻させないといけない。まさに「平成、失敗の本質」の分析が、経営学においては2020年の重要なアジェンダになると考えている。ただし日本企業のすべてが「失敗」に陥ったわけではない。トヨタ、セブンイレブン、ファーストリテイリングらはむしろ平成の時代に大いに発展したわけであり、それこそ組織的な知識創造の成果である。彼らの「成功の本質」に多くの企業が学ばなければならない。彼らの「成功の本質」の1つが知識創造のSECIモデルである。

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