2020年2月号

新規事業開発のための広報視点

ソーシャルメディア時代の危機管理

白井 邦芳(社会情報大学院大学 教授、リスクマネジメント協会 顧問)

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SNSの発展によりITインフラ上での仮想空間のリスクだけではなく、「電凸」「祝電攻撃」といったリアルなリスクも広がっている今、担当窓口の垣根を超えたきめ細かな対応と社内情報共有が強く求められている。

企業において事件・事故・不祥事などのリスクイベントが発生すると、経営者は一時的にクライシスパニックに陥り、冷静さを欠いて、通常時の経営の舵取りや適切な危機管理活動に支障が生じることになります。危機管理の要諦は、「危機をマネージすることは経営課題である」ことを認識し、平時から取り組んでおくことにあります。

「危機」の特徴は、瞬時に資産が消滅・低減するとともに、分単位で事態が急速拡大・拡散し、制御不能となることです。その結果、極めて限定的な受動対応を余儀なくされ、同時に多くの課題が生じます。もちろん、予防管理は重要ですが、完璧なリスク管理に過信すれば、逆に足下をすくわれることにもなりかねません。そこで、危機管理活動は「人と企業はミスを犯す」ことを前提とし、ミスを起こさないようにする体質づくりは管理可能と考えて平時から危機に準備することを重要視しています。

そうした中、相次ぐ企業の隠ぺい体質や不適切な公表姿勢は厳しい社会の目にさらされるようになり、一方で、優れた広報対応は企業評価向上のチャンスとなりつつあります。しかしながら、あらゆるリスクイベントにおいてステークホルダーが知りたい情報は千差万別であり、企業にとって適切な危機管理活動のプロセス管理は容易ではありません。そこで、経営者は危機管理の重要性を再認識し、平時においては未然防止(予防)の視点から何も起こさせない体質づくりを経営投資と理解し、一旦危機が発生して以降は緊急対応としてダメージを最小限に封じ込める危機管理や経営判断に関する能力の醸成に日々努めているのです。

危機管理は「察知予測能力」

危機発生後の展開と予測に基づき企業の危機管理活動は、概ね以下の3種類のプロセスを経て収束すると言われています。
① 予兆⇒察知⇒未然発生防止(Proactive)
② 予兆⇒認知⇒初期対応⇒社内解決(Re-active)
③ 予兆⇒放置⇒後手対応⇒社会問題(Ignorance)

今後、企業は、予兆感知による未然防止を最重要課題として、感度の高い予兆収集体制、一元化された報告ライン、24時間365日体制、全社員が予兆に敏感であり具体的危機を速やかにイメージできる素養を培う教育体制を軸に、社内インフラを整備・構築していくことでしょう。また、何を目指し、何を行うべきかの判断基準は、社内の目と社会の目のギャップを認識し、静観して第三者の目で事象を冷静にとらえる視点で考えることになるはずです。

有事のプロセス管理

危機管理活動におけるプロセス管理は、ステークホルダーに対する説明責任を果たす上でも不可欠であり、以下の4つの工程が含まれています。

(1)Eye-ball catching(情報の裏取り)

有事の初動における「第一報」の正確さとスピード感は何よりも重要です。特に深夜であっても明日を待たない即時性の報告は、常日ごろから従業員の危機意識の感度を高めておかなければ達成できないでしょう。同時に、情報を改ざんしない、触らない、まとめない、ありのままの報告をモットーとし、ログは改ざん・上書きを許容しないルールづくり、事実・意見・伝聞情報・噂・憶測などの仕分けに基づく情報の裏取りなどの繊細な管理がその後の危機管理活動の成否を分けることになります。

(2)Helicopter View(リスクイベントの俯瞰)

第一報を受信した後、重要な作業となるのが「危機の査定」です。査定担当者は極力、経験値を積ませるために専任者とし、一報を受けた後30分以内に作業を開始、情報の精度、背景、危機レベル、ステークホルダーの抽出、マスコミへの影響度、SNS上の拡散度などをもとに24時間体制で臨み、以下の3つの作業を実行します。
① 危機レベルを判定(重篤・軽度・監視)し、今後発生が予測されるリスクイベントを抽出
② 危機管理対策本部に今後の展開を俯瞰し予測した結果を報告
③ 初期対応の現場指示(危機管理対策本部設置前まで)

(3)Stakeholder Management(関係当事者の抽出)

広報部署を中心に、発生したリスクイベントに付随するすべての関係当事者を抽出し、利害関係者のリスク相関図を完成させます。特にStrong Bottleneckとなる対象者の有無をこの段階で認識しておくことが重要となります。

(4)Priority Judgment(優先行動の選択)

既に発生しているリスクイベントだけではなく、今後、同時多発的に発生するリスクイベントを含めて登場が予測される関係当事者に対するアクションプランを整理した上で取捨選択し、優先度の高い関係当事者へのアクションプランを戦術的に執行していきます。

SNSの進化に伴う脅威

インターネットで情報収集している人口は毎年増加し、その90%以上が主要なソーシャルメディアを利用し、すでにこのしくみが深く社会に浸透していることが確認されています。デジタル技術は急速な進化を遂げ、企業のマーケティングを取り巻く環境も激変している中、誰よりも情報を早く知りたいと望む個人の欲求とそれに応えるソーシャルメディアの普及が、さらに爆発的に情報量を増大させ、一度放たれた情報はその適否に関わらず一人歩きし、ネット炎上や風評リスクを引き起こしていることは前述のとおりです。また、第三者による不正なアクセスやサイバーテロによってビッグデータの情報流出やシステムダウンなどの新たなリスクにさらされていることも事実です。今後、企業は科学の進歩に伴い、仮想空間とリアルな世界との境界線が失われつつある中、膨大かつ多様なビッグデータと向き合い、フェイクニュースに惑わされず、適切な情報管理と徹底したリスクマネジメントが求められています。

 

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