2020年2月号
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デジタル時代の経営者

AIの時代、暗黙知が競争優位の源泉 「場」に規程される知識創造

一條 和生(事業構想大学院大学 特別招聘教授)

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企業の競争優位の源泉である知識、それをいかに創造していくかが組織の未来を左右する。成功している企業では、ビジネス現場から生まれる知識を大切に、事業を創造してきた。形式知が重視されがちな現在、暗黙知をデザイン思考で可視化することも大切だ。

組織活動において、知識は競争優位の源泉である。企業組織を例に取るならば、知識はさまざまな形で実現し、バリューチェインのあらゆる場で生まれる可能性がある。知識は研究開発部門で新技術として生まれる可能性もある。新技術の創造は、企業が競争優位を維持・発展させるために有効なイニシアティブである。

米Amazon社の競争優位も知識創造の結果である。頻繁に商品を購入するプライム会員の顧客が人気商品であるPrimeのタグが付いた商品を注文すれば、注文した同日にデリバリーも可能である。それはロジスティックス業務に関する新しい知識なしには不可能である。

宅配に関する新しいサービスをAmazonでは試みている。2019年9月には日本でも、ロッカーや店頭などで荷物を受け取れるAmazon Hubを開始

一方、製造オペレーションでトヨタが創造したのがTPS (Toyota Production System、トヨタ生産方式)である。これにより、トヨタにおいては最高品質のモノづくりが最低限のコストで実現できるようになった。そのために、それまで生産ラインを止めてしまえば解雇が命じられたラインに付く労働者に、不具合が発見されば「アンドン・コード」を引いてラインを止めることが許されることになった。製造における従来の常識が否定されるパラダイム・シフトが起こったのである。

1970年、トヨタ自動車における「日本品質管理賞(デミング賞)」の受審風景。製造現場で品質を高める努力を継続している

セールス・販売の分野に注目するならば、個店経営という新しい仕組みがセブンイレブンによって生み出された。個店単位に商品の発注をすることにより、その個店を訪れる顧客の求める商品を無駄なく、欠品なく品揃えすることにより、セブンイレブンはコンビニエンス・ストアという新しい小売形態を創造することができたのである。

「場」に規定される知識創造

ところで人間の主観からスタートする組織内における人間の知識創造活動において、知識はまず暗黙知(tacit knowledge)として生まれる。我々は自らの体験を通じて、直観的に暗黙知として知識を生み出す。「うまく言葉に表せないのですけれども」という言葉が日常的に交わされるように、我々はしばしば自らの思いを明確に語ることはできない。人間の知識には暗黙的な要素が強く、むしろ暗黙知こそ人間の知識の特質とも言える。人間は語る以上に思うことが出来るのである。

一方、言葉や文章などに表現された知識は形式知(explicit knowledge)と呼ばれ、暗黙知と対比される。それは暗黙知が個人の経験に基づく主観的な知識であるのに対して、客観的でより多くの集団間で共有される知識である。両者の関係を言うならば形式知の背景には、より豊かな暗黙知がある。

組織における知識創造活動に関してもう1つ本質的なことは、それが「場」に規定されることである。「場」、つまり知識創造のコンテクストは、物理的な空間、時間、そしてそこでの人間関係によって規定される。不具合に関する問題解決を競争優位の源泉とするトヨタは、問題解決の方策は「場」、つまり不具合が発生した製造現場にあると考える。

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