AIと人間が共存する経営へ トップに求められる変化への対応
人工知能(AI)に関する技術革新が進み、現在の職業の多くがAIで代替される可能性が出てきた。デジタル時代の経営者は、AIを活用したビジネスモデルを考えることはもちろん、AIと人間が共存する新しい業務プロセスとマネジメントの構築を迫られている。
デジタル・テクノロジーや人工知能(AI:Artificial Intelligence)の急速な進化は、人間による知識創造活動に新たな問題と可能性を提示している。野中郁次郎教授によって開拓された知識創造理論は、人間の主体的な知識創造活動こそ未来創造の源泉であることを示した。「正当化された真なる信念」(Justified True Belief)と定義される知識は、人間が自らの実体験を通じて強い思いを持つことに、人間の知識創造活動は始まることを示している。
個人の主観としてスタートした組織における人間の知識創造活動は、他者とのインタラクションによってダイナミックに進化する。それは個人の思いが組織内において正当化されていく、人間関係に基づく社会的でダイナミックなプロセスである。
その一方で、今、第3次のAIブームが起こっている。AI の歴史は1920年代までさかのぼるが、コンピュータ性能の画期的な進化(スピードと容量)、活用できるデジタルデータの量と種類の爆発的な増大、そして長年研究されてきたディープ・ラーニング技術などの機械学習、遺伝的アルゴリズムなどの発展が今日のブームを支えている。
AIの実験的活用、とりわけ人間に対する競争優位はまずゲームの世界で起こった。2011年にはアメリカの人気クイズ番組「ジョバディ」でIBMが開催したAIのWatsonが二人のチャンピオンに勝利したのを皮切りに、一気にAIブームが加速されたのである。
図 人工知能やロボット等による代替可能性が高い労働人口の割合(日本、英国、米国の比較)
注)米国データはオズボーン准教授とフレイ博士の共著"The Future of Employment"(2013)から、また英国データはオズボーン准教授、フレイ博士、およびデロイトトーマツコンサルティング社による報告結果(2014)から採っている。
ゲームがAI普及を後押し
AIの人間に対する勝利は将棋(AI将棋)や囲碁(Alpha碁)の世界でも続いた。知的アミューズメントの世界でAIが発揮した人間の能力を上回るパフォーマンスに人々は驚いた。そのために、「ジョバディ」でWatsonが優勝した直後に、企業、病院、大学などから、Watsonを業務やビジネスに使いたいという要請が多く寄せられた。医療や保険など、複数のインダストリーにおけるWatsonのビジネス応用実証プロジェクトを数年間、実施した後、IBMとして事業化の目処が立ったとして、2014年1月にはWatson事業部が設立された。
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