タッチ決済は脱現金の原動力 地域経済への波及効果も大きい
政府が掲げる「2025年までにキャッシュレス決済比率40%」。この目標を達成する原動力となりうるのが、端末にカードをかざすだけの「タッチ決済」だ。世界的に拡大するこの決済イノベーションは地方の課題を解決する一助になるという。
国際標準のインターフェースで
利便性と安全性を実現
キャッシュレス決済比率40%達成に向けて、政府は現金以外の支払い手段であるキャッシュレス化の推進を本格化させている。その主な施策が、消費増税に伴い2019年10月から2020年6月までの9ヶ月間実施される「キャッシュレス・消費者還元事業」だ。キャッシュレス決済をした消費者に最大5%が還元され、中小事業者には決済端末の導入費と加盟店手数料を補助することで、キャッシュレス後進国からの巻き返しを図る。
日本でのキャッシュレス決済は、カードを端末に通して磁気ストライプを読み取る方式と、カードを端末に差し込んでICチップを読み取る方式が主流だが、現在はSuicaなどのようにカードを端末にかざすことで決済が完了する非接触決済サービスの普及が広がっている。なかでも、キャッシュレス化推進の原動力となりうるのが「タッチ決済」だ、とビザ・ワールドワイド・ジャパン(以下、Visa)政府渉外部長の渡辺壮一氏は語る。その理由は利便性と安全性を実現した国際標準のインターフェースにあるという。
「1万円以下の利用なら、決済端末にタッチするだけでサインも暗証番号の入力も不要。店員にカードを預けることなく、ユーザー自身が決済手続きを行うため、不正利用の恐れもありません。Visaのタッチ決済は、国際標準のセキュリティ認証技術を備えており、世界約200の国と地域に対応しています」
スピーディーでセキュリティの高いタッチ決済はすでに多くの主要国で導入されている。「対面取引に占めるVisaのタッチ決済の割合は、例えばカナダでは、50加ドル以下の対面取引のうち、70%近くに上ります。ヨーロッパ全体では、対面取引の2/3が、カナダや中央ヨーロッパ・中東・アフリカでは60%、アジアでも1/3を超えており、タッチ決済による割合は増えてきています。また、2020年までに全世界で発行されているカードの約半数がタッチ決済対応になるとの試算※1もあります」。海外では使用できるシーンも多く、マクドナルドやサブウェイ、スターバックスなどの飲食店から地下鉄・バスといった公共交通機関へと急拡大している。イギリスでは2012年のロンドン五輪をきっかけに急速に広まった。
これに追いつくべく、タッチ決済を装備したVisaライセンスの国内発行枚数は1,000万枚を超えた。2018年からはマクドナルドとローソン、今年3月からはイオングループで順次導入が進んでいる。
「今こそ、日本がキャッシュレス先進国に仲間入りを果たす絶好のチャンスです。現在、Visaではタッチ決済に慣れ親しんだ外国人観光客をはじめ、消費者があらゆるシーンで当たり前のようにタッチ決済をお使いいただけるように、使用シーン及び専用端末の拡大と対応カードの普及拡大に努めているところです」と渡辺氏。日常生活の中でタッチ決済を使う人を目にする機会を増やすことで、タッチ決済のムーブメントを起こしていきたいという。
タッチ決済による顧客満足度の改善と売上高増の可能性
インバウンドだけではない
地域経済への波及効果
今や世界で最もタッチ決済比率の高い国となったオーストラリアだが、タッチ決済の普及が拡大したのは2012年頃と、意外にもその歴史は浅い。急速にキャッシュレス化が進んだ要因は何だったのか。
「初めてタッチ決済が導入された2010年から2013年を見ると、すべての決済額で現金の利用が減少したのに対し、カードの利用は著しく増加しました。カギを握ったのは少額市場です。1回あたり50豪ドル以下の買い物がタッチ決済に移行したことで一気に弾みがついたのです」
5千円以下の少額決済において、日本はいまだに91%が現金決済で、市場規模は約100兆円にのぼる※2「高額な買い物以外は現金払い」という人たちを、いかにタッチ決済に移行させることができるかが要となりそうだ。渡辺氏は「実は、日本は電子マネーなど非接触IC決済が最初に普及した国。そこに、国際標準の認証技術を備えた国際ブランドのタッチ決済のメリットを実感できれば、抵抗なくキャッシュレス化に向かっていくでしょう」と話す。
もう1つのカギは地方での浸透だ。渡辺氏は「地方におけるキャッシュレス化のメリットは、インバウンド需要の拡大だけではありません」といい、こう続ける。
「行政や地域事業者の決済業務が効率化すれば、人件費や固定費が削減されますし、削減されたコストを地域住民に還元することで地域経済が潤います。また、決済時の入力ミスや盗難リスクも回避できるので、現金よりもむしろ安心感があります」
キャッシュレス化が進めば地方にもさまざまなメリットがもたらされるが、決済サービスが社会インフラである以上、導入するサービスは慎重に選ぶ必要がある。
「Visaは世界200以上の国と地域で、個人・企業・政府を結ぶ安全で革新的なネットワークを構築してきました。地方にもタッチ決済が浸透すれば、日本は地域差のないキャッシュレス社会に移行できます。この機会に地方のインフラを変えていくという視点で、ぜひ私たちの決済テクノロジーを活用していただけたらと思います」
※1"Juniper Research, Contactless Payments: NFC Handsets, Wearables & Payment Cards 2016-2020"
※2 Visa Contactless Market Research, 2012
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