スパでインバウンド消費喚起 ウェルネスツーリズムの核に

海のそばや温泉で、マッサージやトリートメント、運動をしながらゆったりと過ごすスパ。日本スパ振興協会では、産業振興に欠かせない人材育成や情報提供を行ってきた。地域の特徴を生かしたトータルサービスで、高付加価値の旅行コンテンツ化が期待される。

岡田 友悟 日本スパ振興協会 理事長

日本の温泉文化とは異なる「スパ」文化が海外では大きく発展し、成長ビジネスとなっている。海外のスパは、富裕層向けの滞在型のリラクゼーション施設やダイエット施設から発展したもの。日帰りから長期滞在型、都市部のホテル併設からリゾート地のスパまで、様々な形態のスパがあるが、共通しているのは、水に関係した施設を持ち、健康と美を求める場所であること。米国に本拠を置くシンクタンクのGlobal Wellness Instituteの分析では、全世界のスパ産業の市場規模は2017年に13兆円を超えた。

Global Wellness Instituteの調査によると、アジア太平洋地域はスパ施設数が世界で最も多い

日本スパ振興協会は2004年、国際スパ協会に加盟していた日本の有志が、国内でのスパの普及活動や人材育成を目指して設立したNPOだ。同協会理事長の岡田友悟氏に話を聞いた。

スパによる高付加価値化

世界的に見たスパ産業は、年率約5%の割合で成長している。経済的な余裕が生まれた新興国から、多くの人が健康や美容、リラクゼーションを求めてスパを訪れるようになっているためだ。忙しいスケジュールをやりくりしてスパを訪れ、マッサージやトリートメントを受けたり、サウナやプール、温泉につかったり、健康的な食事を楽しむことで、活力を得たいと考える人は世界的に増加。海外のスパの多くが、このような需要に応えるべく、個人の状態や宿泊日数に合わせトータルコーディネートしたプランを用意している。

日本でも、スパを単独の産業カテゴリとしてとらえるのではなく、ウェルネスツーリズムの主要な要素と見る視点の転換は必要だ。「温泉に入って森林を歩く、といったヘルスツーリズムのツアーでは、地元に落ちるお金は限られます。一方で、スパのように明確な付加価値を提供するサービスは、ビジネスとして成立させやすい。地域の活性化にもつながるはずです」と岡田氏は話す。

増加する一方の訪日外国人旅行者の、日本の温泉への関心は高い。単に宿泊し入浴するだけでなく、マッサージや地元のおいしくて健康的な食事などとセットで提供することで、より高額の観光消費が期待できる。この点において日本の温泉関係者が注目すべきデータとして、世界の温泉/鉱泉業の施設数と、その売上の割合のデータ(下図)を岡田氏は挙げる。温泉/鉱泉業の2017年世界総売上の6兆3000億円のうち66%が、施設数では25%を占めるに過ぎない「スパサービスがある温泉/鉱泉施設」からのものだ。

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