経産省が描く「明るい超高齢社会」 社会福祉と経済政策を融合へ
政府は「生涯現役社会の実現」を政策課題として掲げ、社会福祉政策と経済政策の融合を図ることでマクロ、ミクロ両面から「明るい超高齢社会」の構築を目指そうとしている。経済産業省ヘルスケア産業課長の西川和見氏が、その背景と具体的な施策を語った。
―――なぜ経済産業省が、「生涯現役社会の実現」を政策課題として掲げているのでしょうか。
西川 日本の高齢化率は26%(2015年)と先進国の中でも抜きん出ています。この事実は、生産年齢人口の減少、消費の減退といった負の側面からとらえられがち。しかし、先行投資をすることによって「明るい超高齢社会」へと変えることはできます。ヘルスケアに投資することにより、年齢に関係なく働き、活躍できる社会をつくることができるでしょう。消費も活性化し、社会保障費の適正化につなげることもできるはずです。そのためには課題を解決しなければならないので、産業面においてはイノベーションを起こす必要があります。
ヘルスケアへの投資をより具体的に言うと、ウエルネスとプリベンションの両方を含む「予防」に投資するということです。前者は心身の健康度を向上させ、より良く、楽しく生きるための予防であり、後者は病気・ケガの予防です。
東京大学の秋山弘子教授のデータを見ると、65歳の時点で元気な人ほど、QOLを保ちながら長生できることが分かります。働き盛りの時から健康に留意し、一線を引いた後は緩やかに経済活動に携わったり、地域社会で役割を持ったりするなどして人とつながることが大切になります。また、医療においては認知症、そして糖尿病をはじめとする生活習慣病の克服が課題となります。これらの予防、進行抑制、共生のために新たな健康・医療システムを確立していかなければなりません。
このような予防のためには、これまで医療のソリューションを提供してきた病院と製薬会社だけではなく、幅広い生活産業の参入が求められます。医療、介護の情報と健康生活にかかわる情報を統合していくことが、新たな付加価値を生み出す源泉になるでしょう。
ヘルスケア情報を一体的に活用
―――「予防への投資」とはどのようなものでしょうか。
具体的なキーワードは「健康経営」と「介護予防」です。経産省では、5年前に「健康経営」の考え方を呈示し、これまで義務でありコストであった職域の健康管理が従業員の満足度向上、労働生産性の向上、企業価値の増大につながる取り組みであることを発信。様々な方策で普及を図ってきました。今、上場企業の4社に1社が、中小企業では3万5000社が健康経営に取り組んでいます。
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