電力・ガスの自由化 福岡の大手都市ガスは多角化に活路

電力・ガスの小売全面自由化などにより、エネルギー業界の競争は激化している。国内4大都市ガス会社の1社であり、福岡市に本社を置く西部ガスは、積極果敢な挑戦を続け、ガスエネルギー事業以外の領域でも成長を目指している。

道永 幸典(西部ガス 代表取締役社長)

ガスエネルギー事業以外の
売上比率を5割程度に高める

福岡市に本社を置く西部ガスは、日本4大都市ガス会社の1社。九州北部を中心にガスエネルギー事業を展開し、連結売上高は約2000億円にのぼる。

しかし、昨今の電力・ガスの小売全面自由化によるエネルギー間の競争激化、省エネ技術の進展や防災意識の高まり、人口減や高齢化など、西部ガスを取り巻く環境は大きく変化している。そうした中で、2019年4月に経営トップに就任したのが道永幸典社長だ。今、グループ経営基盤の強化を進めている。「私が社員に話しているのは、まずグループ会社全体で考えましょうと。私どもは公益事業の企業ですし、社員もプライドを持って仕事をしていると思います。この環境変化に対応するため、フットワークよくチャレンジする体制を築いていきます」

西部ガスは2017年度から3ヵ年のグループ中期経営計画を進めており、2019年が最後年度になる。

「今、目指しているのは、グループ全体の事業構造の変革です。中核事業のガスエネルギーと並ぶような新たな事業を育てなければなりません。2026年度にはグループ全体に占めるガスエネルギー以外の売上高比率を50%程度にまで引き上げることを目標にしています」

事業の多角化に向けては、新規事業の創出も重要になる。

「新規事業はスモールスタートで行い、失敗したら潔く手を引く。当然できること、できないことがあると思いますが、今は挑戦という意味合いが大きい。社員みんなが楽しんで仕事ができるように、従業員満足を高めていくことが大事だと考えています」

国内外で不動産事業を強化

現在、ガスエネルギー以外で力を注ぐ事業の1つが不動産だ。西部ガスはこれまでにもマンション販売会社やオフィスビル、地元ゼネコン企業のM&Aを行ってきた。それは国内だけにとどまらず、海外にまで及んでいる。グループ会社がフィリピン・マニラで住宅の建売事業を展開する一方で、今年1月にはタイ(バンコク北部ノンタブリー県)に初の海外現地法人を設立した。

「当社の不動産事業は、まだまだ揺籃期。不動産、特に賃貸業が今後の主力になりうるかといえば、人口減少でリスクもありますから、状況に応じた戦略が必要です。海外では、経済成長が続くタイ・バンコクで富裕層向けの戸建て分譲やコンドミニアム(分譲マンション)を計画中です。戸建て分譲は2020年夏の販売開始、コンドミニアムは2021年夏に竣工して引き渡しを受ける予定です」

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