2019年9月号
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医療分野の事業構想

遠隔でICUを支援 患者・医師・病院に安心を与える

中西 智之(T-ICU 代表取締役社長)

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救急症例や入院中の急変など、重症患者の命を救う最後の砦ともいえる集中治療室(ICU)。全身のあらゆる状態に目配りしながら治療を進めるため、集中治療専門医の知見が必要だ。ICU専門医師による遠隔での支援を提供している企業、T-ICU社長・医師の中西氏に話を聞いた。

中西 智之(T-ICU 代表取締役社長)

一人救急でICUの課題を知る

心臓血管外科医として医師のキャリアをスタートしたT-ICU代表取締役社長の中西智之氏。その後専門を変え、2年ほど大学病院の麻酔科に勤務したところで、救命救急センターへ異動となった。ここで中西氏が意識したのがICUの存在だ。

心臓血管外科医としてICUの経験はあったものの、救急救命センターには心臓血管外科以外の患者もやってくる。あらゆる重症例に対応する集中治療専門医のすごさを実感したという。その後、中西氏は出身地に戻り、200床規模の急性期病院に勤務、一人で救急を担当することになる。救急救命センターで集中治療の最前線にいた中西氏はこのとき、「自分にも集中治療はできる」と思っていた心臓血管外科医時代の自分と、「もっとできることがある」と思える今の自分とのギャップを感じ、集中治療専門医がいないICUの課題を見出した。

図 集中治療室(ICU・HCU)がある病院数

 

中西氏が医師となった20年ほど前には現在のような臨床研修制度はなく、医師免許を取得して卒業するとすぐ医局に所属するシステムであった。さらに「集中治療科」という科もなかった。

現在は集中治療という分野が確立されてきたものの、歴史の浅い領域であるだけに専門医が足りず、ICUにおける専門医の有無により治療成績にも差がみられる状況だ。専門医を関与させることで、ICUからの早期離脱も望める印象もあったことから、何かできないかと思い始めたという。

ICUには大きく分けて3つのタイプがある。ひとつは同じ医師がICUの中でも外でも患者さんを担当するopen ICU。もうひとつはICU専任の医師が主治医から患者を引き継いで担当するclosed ICU。そしてその中間型のsemi-closed ICU。集中治療専門医がいるclosed ICUよりopen ICUのほうが圧倒的に多いのが現状だ。

専門医でない医師が集中治療を行うことが悪いわけではない。しかし、集中治療分野の研究は日々進んでおり、推奨される治療法もアップデートされている。間違いではないが、最適でない治療法が選択されている場合があるのだ。とはいえ、集中治療を専門としない医師が自身の専門分野の勉強もしつつ、集中治療の最新治療までカバーしていくことは現実的に難しい。だからこそ集中治療医の関与が望まれる状況だが、専門医が足りないというジレンマがある。ここまでの課題意識を持っていた中西氏だが、この時点ではまだ起業しようとは考えていなかった。

集中治療専門医がもっとICUで活躍できるように、そのリソースを効果的に活かすには。そう考えた中西氏は、電話によるコンサルテーションを開始した。しかし、心電図の波形を見られなかったり、知りたい検査値が伝わらなかったりと、コミュニケーションがうまく取れなかった。医療機器メーカーを回り、医療情報の共有システムを探したが、適したものが見つからない。

「考えてみれば、必要なのはお互い同じ画像が見えて音声でコミュニケーションする手段です。テレビ会議のように、相手のPCのモニタが見えて通話ができればそれで事足りるのではと考え、自分で起業することにしました」。

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