「スマート自治体」実現へ Society5.0時代の地方とは

狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く「Society5.0」。持続可能な地域社会の構築が求められる今、ICTやIoTの活用のあり方とは。

吉田正彦 総務省 情報流通行政局 地域通信振興課長(役職は講演当時)

業務の効率化だけでなく
労働拠点の変更による好影響も

「Society5.0時代の地方」を自治体と共に創り上げていくため、総務省では、本年1月より、大臣から各自治体の首長宛に、参考となる情報をメールで直接届ける取組を始めており、各種の会議やセミナー、意見交換会などでもこうした情報提供を行っている。ICT活用全国首長会議の基調講演に登壇した総務省の吉田正彦氏は、革新的技術が実装されることで自治体にどのような効果がもたらされるのか、幾つかの実例を挙げる。

「和歌山県の白浜町では、海の見える場所にサテライトオフィスを作りました。地元での雇用促進につながっただけでなく、東京との往復移動時間が無くなり、家族と過ごす時間が増える、生活が朝型に変わる、といった良い変化が出ています。また、例えば茨城県つくば市においては定型業務をロボットに代替させるRPA(Robotic Process Automation)で大幅な労働効率化が図れています。AIの活用によって大都市の保育所入所選定手続なども数秒でマッチングできるようになり、時短や人件費削減につながります」。

インフラ整備と多言語化対応で
情報のやりとりをスムーズに

最先端技術を使うためにはインフラ整備も欠かせない。今年4月10日に周波数が割り当てられた5Gは超高速、超低遅延、多数同時接続を特徴とする21世紀の基幹となる通信インフラだ。「5Gは、来年度から本格的にサービスが開始されます。総務省としても、地域の課題解決に対してより効果的に活用するための検証を進めていきたいので、地域が実際に抱える課題や活用アイデアをぜひ聞かせてください」と会場の首長、自治体職員に呼びかけた。地域ニーズや産業分野の個別ニーズに応じて柔軟に運用できる「ローカル5G」の導入も進めていく計画だ。

インバウンドの増加や外国人労働者の受け入れにおいてもICTの活用が期待されている。情報通信研究機構(NICT)が開発した多言語翻訳アプリ「ボイストラ」は、英語ならTOEIC800点レベルまで精度を上げており、全国の消防本部の51.6%が導入済みだ(2018年12月末現在)。

「外国人の方が救急搬送された場合も円滑にコミュニケーションを取ることができます。学校で外国人の保護者が教師と連絡をとるときも同様です」。

地域でのIoT実装への
前向きな動きを総合的に支援

総務省の情報流通行政局が全国自治体に行ったアンケート(2018年3月末時点)によると、ICT/IoT実装について「関心はあるが、特段の取組を行っていない」団体は54.6%と多数を占めた。「課題として予算の制約、人材や情報の不足、体制の未整備などがあります。総務省は、計画策定への支援、実装事業への財政支援、地域情報化アドバイザー派遣による人的支援、各種の情報提供など、総合的な支援を行っています」。

昨年4月に設置した問合せ専用窓口には、これまでに400件以上の照会があった。「スマート自治体の実現に向けては、多様な事業者の協力も求められます。今日お集まりの皆さんもご一緒に、実現に向けて取り組んでいきましょう」と講演を締めくくった。

 

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ICT 地域活性化サポートデスク事務局
総務省( 情報流通行政局地域通信振興課)

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