マイナンバーカードの利用シーン拡大 自治体ポイントで消費活性化

マイナンバーカードが生活のプラットフォームとなるためには、利用の場を増やす必要がある。国家公務員のIDや図書館の貸出券から、健康保険証まで、その用途は少しずつ広がっている。さらに、消費税率引き上げに合わせた経済対策である、プレミアム付き自治体ポイントへの期待が集まる。

マイナンバーカードを持つ人の割合は2019年3月時点で約13%。行政サービスの電子化を進めるため、普及率の向上が課題だ

顔写真付きの身分証明書であり、インターネット上の電子的な本人確認にも使えるマイナンバーカード。マイナンバー制度の開始から約3年半が経過し、同カードが利用可能なシーンは少しずつ広がっている。2017年9月には、マイナンバーカードを使って公共施設などの利用者カードを1枚にまとめられる「マイキープラットフォーム」が稼働。このシステムは、地域ボランティア活動や健康増進に取り組む住民に自治体がポイントを付与できるようにしたり、クレジットカードのポイントやマイレージなどを「地域経済応援ポイント」として、所定のウェブサイトで買い物に使えるようにするなどの機能を取り入れている。

さらに、2019年5月には、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにする改正法が成立。国民誰もが持つ健康保険証は、マイナンバーカードの「キラーコンテンツ」として期待されている。

景気対策にマイナンバーカードを

一方、2019年10月の消費税率10%への引き上げを受け、準備が進んでいるのが、「マイナンバーカードを活用した消費活性化」だ。消費税引き上げの反動で消費が減るのを緩和するため、政府は様々な対策を計画している。例えば、2019年10月には低所得者・子育て世帯向けプレミアム商品券制度と、中小・小規模事業者の店舗でのポイント還元の支援制度が始まる。マイナンバーカードを用いた消費活性化もそのような施策の1つだ。

マイナンバーカードでの消費活性化は、「自治体ポイント」によるプレミアムの付与を通じて実施される。それでは、この「プレミアム付きの自治体ポイント」とは何なのか? これは、自治体が販売する「プレミアム付き商品券」を電子化したものといえる。「プレミアム付き商品券」は、発行自治体がプレミアム分を上乗せすることで、消費者は支払った額よりも金額の多い買い物が可能になる商品券。地域経済を活性化するために発行されるもので、発行自治体の加盟店などで利用できる。例えば、20%のプレミアを付与する自治体では、消費者は1万円を支払うことで1万2000円分の商品券を受け取れる。使える店のほか、利用期間が決まっているなどの縛りはあるものの、近所の店で買い物をする人にはお得感があり、人気を集めている。

「自治体ポイント」による消費活性化策が想定している仕組みは次の通り。まず、ユーザーはマイナンバーカードを取得した上で、マイキープラットフォームのIDである「マイキーID」を設定する。そして、自治体のポイントを前払いで購入する。ちなみにこのポイントは、居住地以外の自治体からも購入できる。ポイント購入者には、各自治体からプレミアムが付与される。これらは、商品券同様、それぞれの地域にある商店で使うことができる。

さらに、自治体ポイントはオンラインショップでの買い物にも使える。遠隔地の自治体ポイントを購入し、その商品をオンラインショップで購入するしくみだ。オンラインで購入できる商品は地元特産のものに限定されない。

今年度はID取得支援などを後押し

自治体ポイントによる消費活性策が始まるのは、消費税増税直後に開始される2つの経済活性化策が終了した後の2020年度。このため、2019年度予算で総務省が確保した119億円は、事業実施に向けた準備作業に充てる。具体的には、マイナンバー関連のシステム改修や広報などのための予算だ。例えば、より多くの店舗、特に中小事業者に参加してもらうために、導入が容易なバーコード決済とスマホアプリを組み合わせたシステムを準備中だ。なお、消費者が購入したポイントはマイナンバーカードの中ではなく、クラウド上に保管する仕組みだ。

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