Code for Japan×経済産業省 使いやすい行政サイトは可能か?

民間サービスに比べ、使いにくいのが当たり前とされる行政のデジタルサービス。これを放置すれば、国全体の生産性は上がらず、国際競争から取り残される一方だ。よりよいサービスに向け、アジャイルに行政サービスを開発した結果が報告された。

行政とのアジャイル開発は企業にとっても関心の高いテーマ。会場は満席になった

インターネットの普及で誰もがウェブにアクセスできるようになり、国や地方自治体も、様々なデジタルサービスを提供するようになった。しかし、絶えず競争にさらされる民間サービスとは異なり、行政の電子サービスは改善へのモチベーションが低く、使いづらい。サービスの仕様を固めた後に入札、発注というプロセスが踏まれるため、後で不便さに気づいても変更しにくいという事情もある。

行政サイトの構築に当たり、民間で広く導入されている「アジャイルプロセス」(試作と検証をくり返す開発手法)を使うとどうなるか。その過程を公開し、議論するため、Code for Japanは、2019年5月14日にイベント「経産省と本気でアジャイル開発をやってみた!制度ナビPJで見えたGovTechのリアルと未来」を開催した。Code for Japanとギルドワークスが2018年に着手した、中小企業庁「制度ナビ」のアプリ開発の経過から、使いやすいデジタル行政サービスの開発の在り方を考えるものだ。

「制度ナビ」サイトを実際に構築

Code for Japanは、行政と企業、市民が、ICTを用いた協創を通じて社会課題を解決することを支援する活動を行っているNPO法人だ。「行政と民間からの参加者が、一緒に手を動かしながら新しい仕組みを考えていく場です」と、Code for Japan代表理事の関治之氏はイベントの冒頭であいさつした。同団体では、Code for Japan Summitをはじめとする各種のイベントのほか、民間企業のICT人材を地方自治体に短期派遣するプログラムや、地方自治体職員を対象としたデータ活用研修などを手掛けている。

今回は、Code for Japanによる中小企業庁の補助金検索アプリ「制度ナビ」の開発プロジェクトが目玉として紹介された。中小企業庁は、国内の中小企業の経営・事業拡大の支援のため、数多くの支援策や補助金を整えている。しかし、支援を受けるには様々な条件がある。自社が対象となる施策を発見し、短い応募期間内に書類を揃えて提出することは、規模の小さい企業にとってはハードルが高い。

イベントで登壇した中小企業庁の松原匠氏は、「会社勤めする友人から、補助金制度の相談を受けた時に、自分でも適切な制度を探せる気がしませんでした。そこで、制度ナビをつくろうと考えました」と背景を説明した。

これまで、補助金を申請したい企業は、中小企業庁が発行する紙の「中小企業施策利用ガイドブック」を調べるか、ウェブサイト「ミラサポ」を閲覧していた。ミラサポは、補助金や優遇税制、専門家のマッチング、官公需の情報などが網羅されている。しかし、国・地域の各種支援や補助金を一括して検索できないなど、企業から見ると不便な点が多い。

そこで、制度ナビでは、ユーザーから見て使いやすいサイトの開発を目指した。具体的には、支援制度の目的や、企業の創業年数、対象地域などごとに検索できるようにした。民間のアジャイルプロセスと同様、プロジェクトの全体像を把握し、目的がぶれないようにするためのインセプションマップを作成したり、中小企業でユーザーテストを実施して、ユーザーインターフェイスを改善したりもした。

制度ナビの画面。所在地、創業年数や事業内容で、申請可能な補助金を絞り込める

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