南紀白浜エアポート どこでもドア構想で空港型地方創生に挑む

50年前に開港し、2019年4月1日に民営化した南紀白浜空港。JALの定期便が1日3往復のみとローカル拠点空港の中でも規模は小さいが、空港を核とした地域活性化のモデルとなるべく動き始めている。

岡田 信一郎(南紀白浜エアポート 代表取締役社長)

南紀白浜空港は1968年(昭和43)、滑走路1本で開港した。県南部に位置する県内唯一の空港で、2018年の旅客数は約16万人。毎年3億円を超す赤字があり、その現状を打開し発展させようと今年4月から民営化に踏み切った。県から運営を引き継いだのが、経営共創基盤(東京都千代田区)が出資する空港運営会社「南紀白浜エアポート」だ。

紀南が持つ高いポテンシャル

日本全国には約60の地方管理空港があるが、そのすべてが赤字。しかも南紀白浜はリゾート地とはいえ、「関西の奥座敷」として愛されてきた長い歴史があり、旅行者の約7割が関西方面から。近県からの観光客が多く、4割が日帰りのため、経済的な優位性がある土地でもない。なぜ経営共創基盤が南紀白浜空港を選んで投資を始めたのか。関西空港の民営化に向けたプロジェクトに関わってきた経験を持つ岡田信一郎社長は「紀南の総合的なポテンシャルに着目しました」と話す。

県南部の紀南エリアは、美しいビーチや温泉だけでなく、アドベンチャーワールド、そして世界遺産・熊野古道がある。そのような歴史、文化、自然、食、アクティビティが楽しめる恵まれた場所に、飛行機を使えば東京から約60分で来られる。さらに街から空港も近いため、空港に降り立ってからビーチや温泉地まで最短5分で行けるという時間的メリットもある。

「非日常感を味わうにはこれ以上なく恵まれていて、日本だけでなく世界にもアピールできる大きな強み。個人的には観光スポットではない海岸線も本当に美しく、自然からパワーをもらったと感じられるところが好きです」と岡田氏。これらの観光資源は旅行誌ロンリープラネット「訪れるべき世界の地域2018」で世界5位に選出され、世界的にも評価されている。

観光資源のほか、行政による環境整備も広く行われており、ビジネス利用も増えている。例えば、2015年から県と白浜町が推進する企業のワーケーションや、串本町の民間ロケット発射場誘致の成功、恵まれた施設と気候を活かしたスポーツ合宿の誘致などにより、年間の旅客数は上昇傾向。ロケット発射場は誘致が決まったばかりであり、このほかにも進められている政策がある。このような明るい話題も、民営化には追い風となっている。

「今後の第一目標は、現状7割台の搭乗率を改善し、飛行機をいっぱいにすること。そのための課題は山積みです。民営化した空港だからこそできることを追求し、地道にコツコツと課題を解決している最中です」。

空港中心の「どこでもドア構想」

搭乗率の底上げには地域の活性化が不可欠のため、課題も空港内だけでなく地域全体に及ぶ。言語対応などのインバウンド対策が不足気味であることや、これまでのPR戦略が関西圏に向けたものが中心だったため全国的な認知度が低く、観光資源や空港の存在が知られていないこと。そしていちばんの大きな課題が現地での移動だ。紀南エリアの面積は広く、観光スポットが点在している。それぞれを移動する手段も整っておらず、旅行計画が立てづらい。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り46%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。